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【写真特集】レバノンの海岸と自由をそれでも愛す
BY THE SEA
Photographs by BENJAMIN CREMEL

レバノンの首都ベイルートのコルニッシュで礼拝を行う85歳のアブ・ホドル。街の外に出かけているときや子や孫に会いに行く日以外、ここ40年間は一日も欠かさず泳ぎに来ている
<真っ青な地中海の波打ち際には、日焼けした若者や高齢者が集い、太陽と海への愛を隠さない>
レバノンの首都ベイルートの海沿いの遊歩道コルニッシュは、人々の物語であふれている。日光浴やジョギングを楽しむ人が行き交う真っ青な地中海の波打ち際は、内戦の傷痕からかなわぬ夢まで、あらゆる出来事を目撃してきた。
雪を頂く山脈や真新しい超高層ビルを背景にした海沿いのプールに、日焼けした若者や高齢者が集う。彼らは太陽と海への愛を隠さない。日焼けオイルを塗る人もいれば、保湿クリームを使う人もいる。ある人は断食し、ある人はたばこをふかす。イスラムの礼拝を行う人の横には、キリストに祈る人の姿も。
ここでは誰も、他人の出自や信仰など気にしない。深刻な経済危機で壊れかけた国の片隅で、彼らは自由を生きる。
コルニッシュは多様性に富むレバノンの象徴だ。幻滅と希望が交錯するなか、人々は世代を超えて一緒に泳ぎ、笑い、持て余した時間を過ごす。
「嵐や紛争があろうと、ここを離れたくない」と、85歳のアブ・ホドルは言う。失業中の若者が頭上の飛行機を見つめ、母国を出る日を夢見るのを横目に、ホドルは冗談めかした口調で話した。「ここは最高だよ。楽園だね」
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