Picture Power

難民船沈没から1年 海底に眠る記憶

THE WRECK ON THE SEABED

Photographs by Franchesco Zizola

難民船沈没から1年 海底に眠る記憶

THE WRECK ON THE SEABED

Photographs by Franchesco Zizola

イタリア・ランペドゥーサ島沖の水深50メートルの海底に今も横たわる沈没船(撮影日はすべて14年9月)

 イタリア最南端のランペドゥーサ島沿岸で悲劇は起きた。2013年10月初め、難民500人余りを乗せてリビアからイタリアへ向かっていた船が火災を起こして沈没。366人が亡くなった。多くが混乱の続くエリトリアやソマリアからの脱出者だった。

map.jpg

 事故から1年。写真家のフランチェスコ・ジゾラは現場を訪れ、現在の様子を記録に収めた。よりよい生活を求め、旅の途中で命を落とした人々への追悼を込めて。「私自身、そして私の写真を見た人々にこれらの悲劇は避けられたと再認識してほしかった」とジゾラは言う。

 ぎゅう詰めの密航船が起こす事故は、世界各地でもたびたび起きている。そうした死者は、2000年以降で4万人以上。2014年1~9月だけで4077人になり、地中海での犠牲者増が目立つ。有効な手を打てないEU当局への批判も強まっている。

 ランペドゥーサ島沖の沈没船を撮影したのはジゾラが初めてだ。「海に潜って船の中に入ると、非常に多くの人が恐ろしい最期を迎えたことを身に染みて感じた」
 海底に横たわる船の船首はランペドゥーサ港のほうを向いている。まるで私たちみんなの責任を問うかのように。

Photographs by Franchesco Zizola-Noor

<本誌2014年11月11日号掲載>



【お知らせ】

『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』

PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。

スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也/シャノン・ジェンセン/マーティン・ローマー/ギヨーム・エルボ/ジェローム・ディレイ/アンドルー・テスタ/パオロ・ウッズ/レアケ・ポッセルト/ダイナ・リトブスキー/ガイ・マーチン

新聞、ラジオ、写真誌などでも取り上げていただき、好評発売中です。


MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 8

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中