最新記事
シリーズ日本再発見

「演歌も好き」英バンド「スーパーオーガニズム」を率いる日本生まれのオロノが魅せる、ならず者の音楽とは?

2023年01月12日(木)15時31分
鈴木智彦(ライター)
SUPERORGANISM, オロノ

スーパーオーガニズムのフロントマンをつとめるオロノ 撮影:鈴木智彦

<「日本から逃げた」という彼女だが、「凱旋帰国」でその思いを祖国にぶつける。ベビーフェイスに騙されてはならない。反骨のならず者の音楽とその魅力について>

オロノがフロントマンを務めるSUPERORGANISM(スーパーオーガニズム。以下スーパー)は、昨年、セカンドアルバム『World Wide Pop』をリリースし、世界ツアーを敢行した。豪州、ヨーロッパ、アメリカ各地の巡業は肉体的・精神的に重圧の日々だったが、これまでにない充実感で、手応えがあったという。

「一番印象に残っているのはユタ州。住民の7割近くがモルモン教の信者という土地柄だから、大半はドラッグもやってないし、酒も飲んでないはずなのにぶっ飛んでた」

危ない場面もあったらしい。

「アメリカは銃社会で、対応を間違えると乱射事件のような最悪の事態になりかねないから、刺激しないよう伝えんだけど、それでキュリティ―にヤバさが伝わった」

年明けの2023年1月には日本ツアーが始まる。そのためオロノは年末から来日していたのだ。彼女は日本生まれ・育ちだから「帰国」と表現しても差し支えない。しかし、アメリカのメイン州に転校してから、彼女はずっと海外で暮らしている。

「日本が嫌いだった。俺(と彼女は言う)は逃げられたからいい。両親にはとても感謝している」

スーパーを結成しボーカルになってからも、メンバーと一緒にロンドンで暮らしていた。実際、スーパーはイギリスの多国籍バンドで欧米が主戦場だから、日本のマーケットでは「洋楽」に分類される。

オロノの音楽的バックボーンもまた、幼少期から洋楽メインだった。父親はクレージーな音楽フリークで、ハンドルを握るとカーステで『ウィーザー』などの90年代オルタナティブをぶっ続けで流し続けた。

オロノの父は、私にたくさんのCDをプレゼントしてくれたが、その中に『Zaba Duo』というデュオがあった。彼が見つけ、日本の音楽関係者に紹介したアーチストだ。エレキベースとバンデイロ(タンバリンの一種)の2人組なのだが卒倒するほどかっこいい。こうした音楽は、マニアを超えた領域の感度がなければ見つけられまい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

10月百貨店売上は+4.3%で3カ月連続増、円安で

ワールド

アングル:COP30に多数の米企業、トランプ政権不

ワールド

タイ10月輸出、予想下回る前年比+5.7% 対米は

ビジネス

ドイツのEV需要は「自主登録」が押し上げ、業界団体
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中