最新記事
シリーズ日本再発見

日本の女性議員比率はアジアでも最低レベル──男女格差の是正には強制力が必要だ

Rectifying Japan's Political Gender Inequality

2020年11月26日(木)16時10分
ニック・ストアーズ(ディプロマット誌)

9月16日に発足した菅内閣の記念撮影で女性閣僚(白いスーツ)の姿は法相と五輪担当相のみ Issei Kato-REUTERS

<菅内閣の女性閣僚はわずか2人、男たちの意識が変わらないのなら唯一の選択肢は強制力のあるクオータ制導入>

日本の首相交代劇には意外性のかけらもなかった。安倍晋三の下で官房長官を務めた菅義偉は、自民党総裁選に名乗りを上げた瞬間から、ライバルの石破茂や岸田文雄を抑えて大本命とされた。今の日本では当然なのだろうが、総裁選に女性が一人も出馬できなかった事実は(正直言って驚きはなかったが)恥ずべきことだ。

晴れて首相となった菅が9月16日に発表した新内閣の閣僚に名を連ねた女性は、全20人中2人のみ。前内閣の3人にも届かなかった。

日本政界でも4年ほど前には女性が躍進した。稲田朋美が防衛相になり、小池百合子が都知事になり、野田聖子の挑戦も一定の注目を集めた。だが今回は自民党内で女性の名が挙がることもなかった。

各国議員の交流組織、列国議会同盟のオンラインデータベースによると、日本の衆議院議員に女性が占める割合はわずか9.9%。アフリカのエスワティニ王国と大差ない。東アジア・東南アジアで日本より低いのは、すぐれて保守的で絶対君主制を敷くブルネイだけだ。

この10年で近隣諸国では改善が見られたが、日本は逆に10年前の11.3%から後退した。韓国は10年の14.7%から19%に、中国は08年の21.3%から24.9%に、台湾は08年の30.1%から41.6%に増えている。

日本社会の男女格差を説明するのによく持ち出されるのが、今なお儒教的な考え方が根強く残り、女は家事と子育てに専念しろという価値観が支配しているという説だ。

女性の議員は服装や有権者との付き合い方まで詮索されるし、あからさまなセクハラもあり、さまざまな女性差別にさらされる。しかも男性議員たちは派閥という名の徒党を組んで数の力に頼ろうとするが、もともと少ない女性議員は自分たちの派閥を作ることもできない。

ここで注意すべきは、どこの国にも家父長制の伝統はあるということだ。儒教が生まれたのは中国で、その教えは東アジア全域に広がり、台湾や韓国の社会にも強い影響を与えている。にもかかわらず、これらの国や地域は女性議員の数を着実に増やしてきた。その手段が、強制力のある「ジェンダー・クオータ」法の制定だった。

自民党にとってはリスク

ジェンダー・クオータは、ふつう女性に一定数の議席を割り当てるか、政党に対して一定数の女性候補の擁立を義務付ける。そうすることで女性に「無視できない少数派」を形成させ、政策への影響力を確保することが目的だ。それなりの数があれば女性も重要な投票や討論で男性優位の派閥と張り合えるようになり、結果として女性差別も減ると考えられるからだ。

そして徐々にでも女性議員の割合が増えれば、それが当然になり、社会における女性の役割に対する固定観念も時代遅れなものになっていくと期待される。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

円安、家計の購買力低下させる可能性 産業空洞化解消

ビジネス

午後3時のドルは155円半ばでもみ合い、日米金融政

ワールド

豪GDP、第3四半期は前年比+2.1% 2年ぶりの

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比+2.1% 2年ぶりの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中