最新記事
シリーズ日本再発見

職人技をいかに継承するか? 海外でも人気「角缶」復活の物語

2017年08月14日(月)16時25分
廣川淳哉

新たに工場長としてやってきた石川浩之さん。もともと時計の修理などを手がけていたが、モノ作りへの強い憧れがあったという Photo:団遊

<モノ作りの街・台東区の雑貨店「SyuRo」の代名詞ともいえるオリジナル商品「角缶」と「丸缶」。日本以上に北欧などで高く評価されていた「角缶」が、作り手の体調不良により生産休止を余儀なくされていたが......>

東京・台東区の鳥越に「SyuRo」(シュロ)という雑貨店がある。30坪ほどの店内には、華美な装飾や派手な色を付けたりすることなく、木や金属といった素材の持ち味を生かした、さまざまな暮らしの道具が並ぶ。

その中で最も人気があり、SyuRoの代名詞とも呼べるオリジナル商品が、丸と角、2種類の缶だ。「丸缶」は円柱型、「角缶」は直方体で、どちらも同じ素材のフタが付き、大きさは4種類。用いる素材にも、ブリキや真ちゅう、銅といったバリエーションがある。そしてこの2つの缶、実は海外での人気が高い。

丸缶と角缶、この形に見覚えがないだろうか。ある年代以上の人なら特に、懐かしささえ感じるかもしれない。なぜこの素朴にも思えるような日本の「缶」が、外国人にまで評価されているのだろうか。

japan170814-3.jpg

現在も販売中の「丸缶」は、1620〜4536円(消費税込み)。素材はブリキ、真ちゅう、銅の3種類。サイズは「SS」「小」「大」「細長」がある Photo:廣川淳哉

japan170814-4.jpg

SyuRoの「角缶」は1836〜2268円(消費税込み)。現在は生産できないため販売休止中 Photo:廣川淳哉

日本より海外への出荷のほうが圧倒的に多い

SyuRoで扱う商品は、主宰する宇南山加子(うなやま・ますこ)さんが目利きとなり、日本中、時には海外から集めてきたもの。さまざまな産地を自ら訪れ仕入れる商品もあれば、産地と手を組み独自開発したオリジナル商品もある。

モノ作りの街・台東区出身で、父親はアクセサリー職人だったという宇南山さんは、小さな頃からモノ作りに触れ、興味を持ち続け、2008年にこの店を立ち上げた。

japan170814-2.jpg

台東区鳥越にある雑貨店「SyuRo」の店内と、SyuRoを主宰する宇南山加子さん Photo:廣川淳哉

SyuRoのオリジナル商品(ブランド名も「SyuRo」)は、この店で売るだけでなく、国内外のさまざまな店に卸している。丸缶と角缶については、デンマークやスウェーデンといった北欧など、特に海外での人気が高いという。国内と国外の取引先数の比率は10(日本):4(海外)ほどだが、日本に比べ、海外への出荷数のほうが圧倒的に多かった。

海外での人気の理由を尋ねると、「本当にシンプルな箱だから、裁縫箱にしてもいいし、胡麻など食品を入れてもいい。どんな用途にも使えるからですかね」と宇南山さん。

「年齢も性別も国籍も関係なく使えて、洋室にも和室にもしっくりくる。強いて言えば、海外の人のほうが使い方を見つけるのが上手かもしれません。使う楽しみを見出せる人が多いのでしょうか」

【参考記事】炊飯器に保温機能は不要――異色の日本メーカーが辿り着いた結論

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:FRBの新予測、中間選挙で政権後押しへ 

ワールド

自衛隊制服組トップ、レーダー照射で中国に反論 「対

ビジネス

インタビュー:26年も日本株の強気継続、日銀政策の

ワールド

アングル:米政権の120億ドル農家支援、「一時しの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中