こうして時空が示される。それは映画的時空であると同時に、宇宙的時空だ。ふと見上げる星空。日常からの離脱。その瞬間に過去と未来は重なり、自分と愛する誰かも重なる。
人を選ぶ映画であることは否定しない。万人に勧めはしない。スクリーンで観ることが前提だ。でも映画の意味を改めて感じさせてくれる映画であることは間違いない。
最後に蛇足を一つ。これほど唐突で、切なくて美しいキスシーンはちょっとない。
『嵐電』(2019年)
監督/鈴木卓爾
出演/井浦新、大西礼芳、安部聡子、金井浩人
<本誌2021年6月8日号掲載>