消耗しない働き方をし、バイアスのない判断をするための五つのヒント
体だけでなく心も大事 心のエネルギーがすり減ると、直観的な決断や現状維持の決断になってしまいがち lzf - iStockphoto.com
一頭のロバが、二つの干し草の山を前にして思い悩んでいる。その二つは、そのロバからそれぞれ等距離にあり、量もまったく同じだ。ロバはどちらを選ぶこともできず、飢え死にしかかっている。
これは「完璧に論理的なロバ」を風刺した古い哲学的なジョークだ。14世紀フランスの神学者ジャン・ビュリダンの作と言われている。
私たちは、もちろんこの「論理的なロバ」とは違う。私たちの心は、そんなときでも行動を躊躇しないように進化してきている。完璧に合理的な選択をするというより、意外にも「感情」をもとにしたすばやい選択を行い、行動をしながら日々の生活を送っている。
感情抜きでは、何をするにも苦労することになる。ある研究によれば、脳に損傷を負って感情を司る系統を失った患者は、ごく些細な物事の選択もできなくなるという。彼らは、「そろそろ考えるのをやめて行動する」タイミングがわからない。「ビュリダンのロバ」と同じだ。
私たちは十分検討を重ねた思慮深い決断を下す能力がない、と言っているわけではない。そうした能力はもちながら、必要に応じてすばやく直感的に判断する能力をも備えている、ということなのだ。つまり私たちのマインドでは、状況に応じて二つの別々の思考システムが働いている。