コラム

恒大集団の危機は中国バブル崩壊の引き金になるか

2021年09月28日(火)20時03分

問題は恒大集団の破産の影響が不動産業全体、ひいては中国経済全体に与える影響をどう最小化するかである。恒大集団は債務を返済するために所有する不動産をすでに投げ売りし始めているが、これがエスカレートすると、他社の不動産の価格にもマイナスの影響を与える。他の不動産業者も資産価値が下がって債務超過に陥る。そうなると、不動産業に融資している銀行も不良債権を抱えることになる。

こうしたバブル崩壊のシナリオが目の前にある。恒大集団は退出させつつも、経済全体のバブル崩壊をもたらさないよう、恒大が所有する不動産は資金力と販売力のある同業他社への売却を進めていく必要があろう。

また、盛京銀行が破綻したら遼寧省の地域経済に対する影響が大きいので、他の銀行に合併するなどの慎重な整理が求められよう。

恒大集団は中国の不動産業界で売り上げが第2位ではあるが、同社の2020年の売上額7038億元(12兆円)は、中国の不動産業トップ100社の売上13兆元(225兆円)の5.4%にすぎない。20万人もの従業員を抱える恒大集団が破産すれば、その影響は従業員、銀行、建設業者、資材メーカーなど広範囲に及ぶのはたしかだが、不動産業界のなかで、恒大集団が開発中の住宅団地を買い取って消化することは可能であろう。恒大集団は「大きすぎてつぶせない」企業だとはいえない。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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