コラム

中国「スーパー大使館」構想が、英中の外交問題に...建築図面「黒塗り」部分の開示をめぐり応酬

2025年08月07日(木)20時31分

英内務省と外務省は大使館の安全を確保するため敷地の周囲に「物理的な境界」を設けるよう要請。書簡ではこれが移設計画の重大な変更となり、さらなる協議が必要となる可能性があることが明記されている。中国大使館側の弁護士は設計変更の意図はないと説明している。

中国は2018年にロイヤル・ミント・コートを2億5500万ポンド(約502億円)で購入したが、地元のタワーハムレッツ区議会が22年に安全上の懸念と住民の反対を理由に大使館移設に反対、計画は頓挫していた。

中国は対抗措置として在中英国大使館再建を阻止

中国の習近平国家主席は昨年8月の電話会談でキア・スターマー英首相に問題を提起し、大使館移設計画は英中間の主要な外交問題として浮上した。ガーディアン紙によると、中国は移設計画が止まっている間、対抗措置として在中英国大使館再建を阻止しているとされる。

ドナルド・トランプ米大統領の復活を受け、スターマー政権は米国、欧州連合(EU)、中国との等距離外交に舵を切った。しかし建設予定地は2つの金融街を結ぶ地下の光ファイバーケーブルに近い上、反体制派や一般市民をスパイするために利用されるとの疑念が投げかけられる。

デーリー・メール紙は「大使館の地下室が『スパイの地下牢』に転用される恐れがある」との懸念を示す。スーパー大使館建設に反対してきた対中政策に関する列国議会連盟のルーク・デ・プルフォード氏は「外相と内相は毅然とした態度を貫かなければならない」と釘を刺す。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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