コラム

トリプル安の英経済より危険...「危機的状況」すら反映できない日本市場のマヒ状態

2022年10月05日(水)17時34分

英市場と違って機能不全に陥った日本市場

最終的にどのような政策を実施するのかは、市場ではなく英国民が決めることだが、健全な市場というのは政策の合理性を判断する大きな役割を担っている。

イギリスでは市場がしっかりと機能する一方、日本においては、国債市場で2日連続で取引が不成立になるなど、市場が持つ価格形成機能が失われつつある。最大の原因は、日銀が一定以上に金利が上がらないよう無制限に国債を買い取る「指し値オペ」を実施していることであり、この状態では本当の金利が何%なのか誰にも分からない。

株式についても、上場企業の多くが日銀や公的年金が筆頭株主という異常事態が続いており、これらは全て異次元緩和の副作用である。

日本では3大市場のうち2つが機能不全となっており、国民は自国経済がどのような状態にあるのか判断できない。例えるなら、壊れた計器でのフライトを余儀なくされた飛行機のようなものだ。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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