アングル:革命防衛隊が担ぎ上げたイラン新指導者、本人沈黙に国内外で懸念も
写真はモジタバ師。2024年10月、テヘランで撮影。提供写真。WANA (West Asia News Agency) via REUTERS
Parisa Hafezi Angus McDowall
[ドバイ 10日 ロイター] - イランの「革命防衛隊(IRGC)」は、新たな最高指導者にモジタバ師を据える人事を押し切った。父より扱いやすく、革命防衛隊の強硬路線に同調しやすい人物と見込んだためだ。現実主義派の懸念は退けられた――同国の高官筋がそう明かした。
もともと強大な権力を握るIRGCは、戦争開始後に影響力をさらに強めた。モジタバ師選出に反対し、発表を数時間遅らせた政治・宗教指導層の幹部らの懸念も、すぐに押し切ったという。
戦争で既に1000人を超えるイラン人が命を落とす中、モジタバ師の最高指導者就任に反対する人々の懸念は深まっている。選出が発表されてから48時間以上が過ぎてもなお、本人は声明を出していないためだ。
高官筋3人と改革派の元高官、別の内部関係者は、IRGCが押し通したモジタバ師の選出について、対外的にはより攻撃的な姿勢、国内的にはより厳しい弾圧につながる可能性があると指摘した。
うち2人はIRGCの体制支配が、イランを宗教的正当性という薄皮に包まれた軍事国家へとますます変貌させかねないと懸念を示す。既に縮小しつつある支持基盤を損ない、複雑な脅威に対処する余地を狭める恐れもあるという。
<モジタバ師は攻撃で負傷か>
数十年にわたり父ハメネイ師の執務室を支えた影響力のある「裏方」ながら、モジタバ師は国民にはあまり知られていない。加えて、ハメネイ師が死亡した米国とイスラエルによる攻撃で負傷した説もある。
この噂を裏付けるかのように、国営テレビのキャスターはモジタバ師を「ラマダン紛争のジャンバズ」と呼んだ。今回の紛争による「ジャンバズ(負傷兵)」であることを示唆する表現だ。ロイターは、モジタバ師の容態を確認できていない。
88人による専門家会議が新指導者を発表した8日深夜以来、続いている沈黙の背景には、こうした事情に加え、父が暗殺された後の治安上の不安があるのかもしれない。
革命防衛隊と最高指導者府(ベイト)が今、最も目に見える形でイランの権力を握っている。ベイトは独自のネットワークで官僚機構全体に影響力を行使し、公的な行政とは別系統で物事を動かしている。
「三頭政治」の一角として指導者交代期間の統治を委任されたペゼシュキアン大統領は、湾岸諸国に対する攻撃を謝罪したが一転、7日に発言の撤回を余儀なくされた。誰が実権を握るのか、という疑問はこの一件で消え去っただろう。情報筋がロイターに伝えたところでは、IRGC高官らはペゼシュキアン大統領の謝罪に激怒していたという。
前述した関係筋3人のうち1人は、故ハメネイ師が体制内で政治・聖職者エリート層の意見のバランスを取りつつ、IRGCもうまく制御していたと語る。だが今後は、「仮に新指導者が指揮を担えるほど健康であっても、重大な決定における最終決定権はIRGCが握る可能性がある」と続けた。
米首都ワシントンのシンクタンク、中東研究所のアレックス・バタンカ上席研究員は「モジタバ師の地位は革命防衛隊によるもので、父ほどの絶対的な権威は持てないだろう」と述べた。
<革命防衛隊が「露骨な」メッセージ>
憲法上、最高指導者の選出は専門家会議の権限とされている。しかし1979年のイスラム革命以降、2回実施された指導者選出ではどちらも、他の権力者の助言に左右されてきた。
イラン革命を指導したホメイニ師が89年に死去した直後、決定的な影響力を発揮したのは当時の有力政治家、ラフサンジャニ元大統領だった。ラフサンジャニ氏は専門家会議に向け、ホメイニ師が死の床で自分に対してハメネイ師の名前をささやいたと伝えた。
今回、権力を握るのはIRGCであり、そのメッセージははるかに露骨だった、と情報筋5人全員が語る。IRGCは、戦争には迅速な手続きが必要であり、米国に抵抗できる候補者を選ぶべきだという論拠を用いた。
専門家会議のメンバー、モフセン・ヘイダリ師が国営テレビで語った内容によると、イスラム教シーア派の聖地コムの議場が爆撃されたため、会議は非公開の別の場所で召集された。一部は投票に参加することはおろか、知らされてさえいなかったという。
ヘイダリ師は出席者が定足数である3分の2に達していたと述べつつ、実際の人数は明示しなかった。出席者の85-90%がモジタバ師を支持したという。
欠席者のどの程度がモジタバ師を支持、もしくは反対したか、その数字はわかっていない。ただいずれにせよ、革命防衛隊が望んだであろう「全会一致」には届いていないことがうかがえる。
<強硬路線への懸念>
関係者のうち2人によれば、一部の聖職者は世襲による継承を快く思わず、今回の選択が体制支持者の離反まで招きかねないという恐れを抱いていたという。
また、1人の情報筋は、政府高官や聖職者の一部が過去1週間で何度も協議を実施し、代替案を推し進めようとしていたとの舞台裏を明かした。
しかし改革派の元高官によれば、IRGCはモジタバ師の就任に反対する人々を次々と脅迫したという。専門家会議のメンバーに対するIRGCの接触は批判も呼んだが、結局はモジタバ師を支持せざるを得なかったと関係者は語った。
モジタバ師の就任は当初8日朝に発表される予定だったが、反対派の抵抗が長引き深夜にようやく発表されたと情報筋の5人全員が述べた。
ある当局者が語ったところでは、モジタバ師は長年、父の下でベイトのトップを務め、戦死した司令官らに代わって台頭した中堅指揮官らと特に非常に緊密な関係を築いてきたという。
改革派の元高官は結果的として、IRGCが長年求めてきた完全な支配権をついに掌握し、外交・内政共により過激な方向へ進むだろうと述べた。
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