焦点:FRB金利据え置きへ、中銀独立性への脅威が影落とす
写真は 米連邦準備理事会(FRB)のビル。2012年4月、ワシントンで撮影。REUTERS/Joshua Roberts
Howard Schneider
[ワシントン 26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は、27―28日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を現行の3.50―3.75%に据え置く見通しだ。しかし、トランプ米政権によるパウエルFRB議長に対する刑事捜査、トランプ大統領によるクックFRB理事への解任通告を不服とする同氏の提訴、5月に議長任期が切れるパウエル氏の後任指名などさまざまな問題が影を落としている。
パウエル氏の8年の議長任期は、あと3回のFOMCを残すだけとなった。議長交代は通常ならば円滑に進むはずだが、混乱を招く可能性をはらんでいる。パウエル氏は、任期が残っている理事として留任するかどうかの決断に直面しているのだ。
最高裁はクック氏を巡る訴訟で、大統領によって解任される初のFRB理事となるかどうかを判断する可能性がある。また、トランプ氏がFRB議長に指名する人物は上院の承認を得るため、トランプ氏の要求に縛られることはないと議員らを納得させなければならない。
多くの動きが出てくる中で、FRBの独立性が危機に瀕している状況では、政策論争は二次的な問題のように思われる。だが現時点では、アナリストらはFRBの制度的なガードレールが維持されるとの見方をほぼ共有している。市場ベースのインフレ率の予想と米国債長期利回りは、今のところFRBの将来について広範な懸念を示してはいない。
SGHマクロ・アドバイザーズのチーフ米国エコノミスト、ティム・デューイ氏は「次期FRB議長の行動は、経済環境や他のFOMC出席者への影響力と切り離して考えることは不可能だ」とし、「トランプ氏がFRBを完全に掌握するには、FRBの人事をより大きく入れ替える必要があるだろう」と指摘した。
実際、次期FRB議長はトランプ氏の意向にかかわらず、他のFRB理事や、投票権を持つ5人の地区連銀総裁に利下げの必要性を納得させる必要があるだろう。
そのプロセスはおそらく今週、トランプ氏が次期FRB議長を発表することで大きな前進を見せそうだ。最終候補にはトランプ氏の経済顧問であるハセット国家経済会議(NEC)委員長、ウォラーFRB理事、ケビン・ウォーシュ元FRB理事、資産運用大手ブラックロックの債券投資部門最高責任者リック・リーダー氏が名を連ねている。
トランプ氏は、経済を活性化するために必要だと自身が考える大幅な利下げを実行しなかったとして、FRBとパウエル氏を厳しく非難してきた。
<いったん職に就くと変わる>
投資家らは現時点では、次期FRB議長の下で今年6月まで追加利下げが一時停止されると予想している。
昨年12月上旬の前回FOMC後の経済指標によると、労働市場もインフレ動向もほとんど変化がなく、次の利下げ時期に関するガイダンスの材料には乏しい。雇用の伸びは弱いものの、好調な経済成長と個人消費を背景に昨年12月の失業率は4.4%に改善した。インフレ率を2%に抑えることを目指すFRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数は昨年11月に前年同月比上昇率が2.8%となり、市場予想をわずかに上回った。
パウエル氏の28日の次回FOMC後の記者会見では政策の議論よりも、前回会合後に起きた出来事に関する発言に時間を割くことになるかもしれない。それは司法省のパウエル氏に対する大陪審の召喚状の発付と、FRB議長が刑事捜査を受けることへの脅威、パウエル氏がこうした動きはトランプ氏がFRBに利下げを迫る運動の一環だと非難した異例の動画声明などについてだ。
トランプ氏によるFRB理事解任に反発してクック氏が起こした訴訟の最高裁公聴会では、裁判官らがクック氏の解任を不当と判断する方向に傾いていることを示した。これにより、FRBに対する差し迫ったリスクへの懸念は和らいだ。
一方でトランプ氏が、通常の任期満了よりも多くのFRB理事の交代を希望していると表明していることが改めて浮き彫りになった。
ミラン理事が1月末で任期満了となり、現状では次期FRB議長が後任の理事となる。辞任や解任がない限り、次に空席となるのはパウエル氏の理事ポストだ。だが、パウエル氏はFRB議長を降りた後も2年間にわたって理事にとどまることができる。
トランプ氏は米CNBCテレビに対し、パウエル氏について「とどまるのならば、とどまることになる」と表明。また、次期FRB議長の指名について「問題は、いったん職に就くと変わってしまうことだ」と打ち明けた。
この「変化」できる能力、つまり大統領の要求に反する決定を下す能力が中銀の独立性にとって極めて重要だ。
<短期見通しは良好>
FRBの政策金利が、政策当局者が中立金利と見なす水準(景気を刺激も抑制もしない水準)の付近にあり、経済が大幅な雇用減少やインフレ率拡大に向かっているとは明確に言えない状況下で、オックスフォード・エコノミクスの米国チーフエコノミスト、マイケル・ピアース氏は先週発表した顧客向けのノートで「短期的な見通しは良好」との見解を示した。
だが、次期FRB議長が就任し、特にクック氏がFRB理事を解任されるという「わずかなリスク」が現実となった場合には「FOMCの外の出来事が道筋を揺るがす可能性がある」と警告した。
一方で「私たちの基本シナリオはFRBが6月と9月に政策金利を引き下げ、3%程度で利下げを停止するという見通しだ」と表明し、次期FRB議長でもトランプ氏が要求する迅速かつ大幅な利下げを実現するのは難しいかもしれないとの見通しを示した。
その上でピアース氏は「FRBがより早期かつより積極的な利下げを実施するには、労働市場の状況が明らかに悪化する必要があるが、その可能性は低いと私たちは考えている」と説明した。
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