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焦点:権力固め急ぐベネズエラ暫定大統領、カベジョ氏と暗闘

2026年01月19日(月)15時47分

写真は15日、議会演説を行うためカラカスの議会に到着したベネズエラのロドリゲス暫定大統領。右はカベジョ内務・法務相。 REUTERS/Leonardo Fernandez Viloria

[17日 ロイ‍ター] - ベネズエラのロドリゲス暫定大統領(56)は、米国によるマドゥロ大統領拘束を受‌けて権力基盤固め進めており、政権内部の脅威から身を守るために側近を要職に据える一方、原油生産を増やせという米国の要求にも応じている。

副大統領兼石油相を務めてきた寡黙で厳格なテクノクラートであるロドリゲス氏は、これまでに中銀関係者や大統領首席補佐官を任命したが、特に重要とみられているのが国軍諜報局(DGCIM)‌のトップにグスタボ・ゴンサレス少将(65)を充てた人事だ。政府​の内情を知る3人の関係者は、ゴンサレス氏の起用はロドリゲス氏が直面する最大の脅威であるカベジョ内務・法務相に対抗するための一手だと指摘した。カベジョ氏は治安機関と緊密な関係があり、反体制派支持者を殺害してきたとされる、親マドゥロ政権の民兵組織「コレクティーボ」ともつながりを持つ強硬派だ。

政府に近いある関係者は「ロドリゲス氏は、米国の同意なしには生き残れないということを非常によく分かっている。すでに軍の改革に着手し、入れ替え人事を進めている」と話した。

外交官、企業関係者、政治家を含むベネズエラ国内の関係者7人への取材から、これま‌で詳しく報じられていない政府中枢内部の亀裂と、ロドリゲス氏が内部統制を固めつつトランプ政権からの石油引き渡しに関する要求に応えようとする中で直面するリスクが明らかになった。

ロドリゲス氏が薄氷を踏むような状態にあることは就任後初の演説でも明白だった。15日に行った演説では国民に団結を呼びかけ、マドゥロ氏の忠実な副官としての正統性を強調し、石油産業向け投資を拡大してベネズエラ政治に新たなページを切り開くと誓った。

<内部対立>

ビジネス上の人脈から「女帝(ツァリーナ)」の異名を持つロドリゲス氏は、石油産業など民間の重要部門を広く掌握し、現在は米国の支持も得ている。

カベジョ氏が率いているのは別の主要勢力だ。

与党・統一社会党(PSUV)の党首でもあるカベジョ氏は元軍人で、12年間にわたり国営テレビで毎週4時間の番組を持ってきた。マドゥロ氏拘束後には防弾チョッキを着て武装警護に囲まれ、「疑うことは裏切りだ」と叫ぶグループを先導する映像が流れた。

事情に詳しい関係者4人によると、トランプ政権の高官らはマドゥロ氏拘束作戦の数カ月前からカベジョ氏と接触。作戦後も連絡を取り合い、治安機関やコレクティーボによる反対派への攻撃を避けるよう警告していた。

チャベス氏を支持し投獄さ​れた経歴を持つカベジョ氏は、米国で起訴されており、身柄拘束に対して2500万ドルの懸賞金がかけられている。

これまでのところカベジョ氏⁠はロドリゲス氏に融和的だ。二人は「非常に団結している」と述べ、ロドリゲス氏による15日の演説にも出席した。しかし両者の関係を知る関係者によると、カベジョ氏が依然としてロ‍ドリゲス氏の統治にとって最大の脅威だ。

首都カラカスでは治安部隊が神経をとがらせている。ロドリゲス氏の宣誓就任から数時間後、大統領官邸の外で短時間の対空砲火があり、米国による新たな攻撃ではないかと懸念された。実際には、警察と大統領警護隊の間の連絡ミスで、警護隊が警察のドローンを撃墜したものだったとされる。

ベネズエラは国全体がマドゥロ氏拘束の衝撃から立ち直れず、なお混乱状態にある。匿名を条件に語った3人の党員によると、一部地域では地元の社会主義党支部が党員に対し、近隣住民を監視し、マドゥロ氏失脚を祝っている者がいれば報告するよう求めている。

こうした緊張した環境下でロドリゲス氏は党内‍の忠誠派に対して、自分はマドゥロ氏を裏切った米国の操り人形ではないと納得してもらう必要がある。また、米国の攻撃以降、生活必需品の価格急騰に見‍舞われている‌経済を安定させ、数十年にわたるチャベス主義の統治の中で形成された、軍と結びついた広範な利権ネットワークをある程度掌握しなけれ‍ばならない。

ベネズエラは現役・予備役の兵力が米国の20分の1にすぎないが、将官・司令官が最大で約2000人と米国の2倍以上に達する。現役および退役の高官らは食料配給、原材料、国営石油会社PDVSAを掌握し、数十人の将軍が民間企業の取締役会に名を連ねている。

高官の多くは自らの裁量で「領地」を運営することが可能で、指揮下の兵士に巡回や検問を命じている。マドゥロ氏拘束以降、一部地域やカラカスでは治安機関の活動が活発になっている。

<弾圧のボス>

新たに軍事防諜機関DGCIMのトップに就いたゴンサレス氏は政府でのキャリアが長く、特に文民による情報機関のトップを2度務めた際にはカベジョ氏と緊密に協力した。

ゴンサレス氏を役職に引き上げたのはロドリゲス氏で、2024年にはゴンサレス氏を、⁠国の最重要企業であり経済の原動力である国営石油会社の要職に抜擢した。

それでもゴンサレス氏がDGCIMをどこまで掌握できるかについては疑問が残る。政府の内情を知る3人の関係者によると、同機関内のカベジョ派がゴンサレス氏の権限行使を妨げる可能性がある。

治安機関の内情に詳しいある関係者によると、ゴンサレ⁠ス氏の前任者も同機関の掌握に苦労した。前任者には実権がなかったとして、「弾圧のボスは既に決ま‍っている。カベジョだ」と言い切った。

カベジョ氏と関連が深いコレクティーボが「無秩序化」戦略を実行することで国を統治不能にする可能性もあると、政府に近い関係者は話した。この戦略はもともと米国の介入を阻止するために計画されたが、ロドリゲス氏に向けられる可能性もある。情報機関とコレクティーボを動員してカラカスを混乱と無秩序に陥れるプランだという。

またカベジョ氏​は、トランプ氏が称賛してきた囚人釈放のペースを遅らせることもできる。釈放ペースは家族や人権団体が求める水準よりもはるかに遅く、ロドリゲス氏にとって新たな圧力になり得る。

一方、海外ではカベジョ氏に対する圧力が高まり続けている。

米下院のマリア・エルビラ・サラザール議員はXに今月、「トランプ政権がベネズエラで真の移行を実現するためには、遅かれ早かれディオスダド・カベジョに米司法の裁きを受けなければならない。ディオスダドが裁かれるときが、ベネズエラにおける民主的移行と、すべての政治的人質の解放に向けた決定的な一歩になる」と投稿した。

ロイター
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