トランプ氏、高市氏に日中関係の状況悪化望まずと伝達 25日の電話会談=関係筋
写真は握手するトランプ米大統領と高市早苗首相。都内で10月代表撮影。REUTERS
Tamiyuki Kihara Yukiko Toyoda
[東京 27日 ロイター] - 日米首脳による25日の電話会談で、トランプ米大統領が高市早苗首相に対し、日中関係悪化のさらなるエスカレーションを望まないとの考えを伝えていたことが分かった。来年秋に中間選挙を控え、米国経済への影響を考慮して対中関係改善を図るトランプ氏の姿勢を強く表した発言とみられ、中国との対応で米国の後ろ盾が欲しい日本には目算が狂った形だ。
電話会談の内容を知る複数の日米関係筋が明らかにした。関係者の一人は「トランプ氏から特別な注文があったわけではない」とする一方、米中の間で通商交渉が佳境を迎える中、トランプ氏が同盟国の日本と中国のさらなる関係悪化を望んでいないと説明した。
日米の電話会談に先立ち行われたトランプ氏と中国の習近平国家主席との電話会談では、トランプ氏は来年4月に北京を訪れ、その後習氏が米国を国賓訪問することが決まった。前出と別の関係者は「トランプ氏はいま、対中関係をうまくマネージして来年の相互訪問を成功させたいと強く考えている」とし、高市氏との電話会談で「日中関係悪化のエスカレーションを招きたくない」との意向が示されたことを認めた。
米ホワイトハウスはロイターの取材に対し、「米国と中国の関係は非常に良好であり、緊密な同盟国である日本にとっても非常に良いことだ」と回答した。日本の外務省は、日米電話会談後の発表内容を参照するようロイターに求めた。高市氏は会談後、記者団に対し「日米間の緊密な連携を確認できた」と説明していた。
トランプ氏が高市氏に中国への対応を抑制的にするよう求めた背景には、大詰めを迎えた米中の通商交渉があると複数の関係者は解説する。
米国は中国にレアアース(希土類)輸出制限強化の見送りを求めているほか、中国からの輸入品に100%の関税を課すか否かなどについて交渉中だ。来年の中間選挙を念頭に農業従事者への支持を広げたいトランプ氏にとって中国による米国産農作物の追加購入は魅力的で、米中関係改善の優先度は極めて高い。
前出の関係者の一人は「米国は基本的には日本の味方であり続けている」とした上で、「まずは米中合意を決着させたいが、一方で日米関係が重要との考えもある。トランプ氏にとっても難しい状況なのだろう」と語った。
日本政府は今後、「戦略的互恵関係」に基づく「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を図るとの考え方に変わりがないことを改めて中国側に強調し、事態の沈静化に向けた糸口を探る構えだ。高市氏は首相就任後初めて臨んだ26日の党首討論で「対話を通じてより良い関係を作り、国益を最大化するのが(自身の)責任だ」と話した。
ただ、中国側は高市氏の台湾問題をめぐる国会答弁の撤回を求める姿勢を崩していない。日本政府内にも「撤回する必要はない」(日本外務省関係者)との声があり、関係改善の兆しは見えていないのが現状だ。
高市氏は今月7日の衆院予算委員会で、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」として想定されるケースについて台湾問題に言及し、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考える」と答弁した。中国側は激しく反発し、国民への訪日自粛要請や日本映画の公開延期など経済、文化面での影響が広がっている。
(鬼原民幸、豊田祐基子、Tim Kelly、Trevor Hunnicutt編集:久保信博)





