シャインマスカット栽培権、農水省がNZへ供与検討 小泉氏に山梨県抗議

ブドウの高級品種「シャインマスカット」の栽培権(ライセンス)を農林水産省がニュージーランドに付与する方向で検討していることがわかった。写真は2019年11月、東京で撮影(2025年 時事通信)
Tamiyuki Kihara
[東京 25日 ロイター] - ブドウの高級品種「シャインマスカット」の栽培権(ライセンス)を農林水産省がニュージーランドに付与する方向で検討していることがわかった。日本産の品種が海外で無秩序に栽培されるのを防ぐ取り組みの一環で、実現すれば初めてのライセンス供与となる。ただ、国産品の輸出拡大を目指す産地は反発。山梨県が25日、国会内で小泉進次郎農相に抗議する事態となった。農水省肝入りの政策が第1号案件からつまずきかねない状況だ。
「輸出ができない中でライセンスが供与されれば生産者が大きな打撃を受ける。せめて同じ土俵で対等な競争させてほしい」。山梨県の長崎幸太郎知事はこの日、小泉氏と面会して農水省に方針転換を迫った。
ライセンス供与は農水省が推し進める政策の一つだ。果樹の種苗が違法に流出することで日本の高級品種が海外で栽培され、第三国に輸出される事態が広がっているからだ。政府が正式にライセンスを供与することで監視体制を世界的に整え、周年供給によるマーケットの確保、品種の質や競争環境を守る目的もある。
ただ、山梨県によると植物検疫などが障壁となり、国産シャインマスカットの輸出が一向に進まないという。長崎知事は小泉氏に「輸出ができなければ対等な競争すらできない」と強調。ニュージーランドへのライセンス供与の前に、輸出のための体制整備を求めた。小泉氏は「産地の理解が得られない状況の中では今後の海外許諾は進めることはない」と応じたという。
農水省はシャインマスカットのライセンス供与についてこれまで対象国を公表していなかった。同省の担当者はロイターの取材に「ニュージーランドの企業からシャインマスカットを作りたいという相談を受け、ライセンス供与を前向きに検討しているのは事実だ。日本の生産者の輸出先と競合しない市場の開拓を想定しており今後産地の方々に説明していく」とした。
シャインマスカットは国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構が1980年代後半から約30年かけて開発。日本で高級ブドウとしてブランド化した。有望な輸出品となる可能性があったが、種苗が流出したことで中国や韓国産が東南アジア向けに輸出されているのが確認されている。
農水省は年間100億円以上の損失が発生していると試算。今年4月に更新した「食料・農業・農村基本計画」に、有望な農産品の栽培権を他国に供与する方針を明記した。