ニュース速報
ワールド

世界の公的債務、今年100兆ドル突破へ 増加加速も=IMF

2024年10月15日(火)15時00分

国際通貨基金(IMF)は15日、「財政モニター」を公表し、世界の公的債務総額が今年中に初めて100兆ドルを上回るとの見通しを示した。資料写真、2018年9月撮影(2024年 ロイター/Yuri Gripas)

David Lawder

[ワシントン 15日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は15日、「財政モニター」を公表し、世界の公的債務総額が今年中に初めて100兆ドルを上回るとの見通しを示した。

政治的な感情が支出の増加につながる一方で、成長鈍化で借り入れのニーズとコストが増大するため、債務が予想よりも急速に増加する可能性があると警告した。

IMFによると、世界の公的債務は2024年末までに国内総生産(GDP)の93%に達し、30年には100%に近づく。これは新型コロナのピーク時の99%を上回る。またコロナ対応で政府支出が急拡大する前の19年から10%ポイント上昇することになる。

「財政政策を巡る不確実性が高まり、税制に関する政治的なレッドライン(超えてはならない一線)はより強固なものになった」とする一方で、「グリーン化、高齢化、安全保障への懸念、長年の開発課題などに対処するための支出圧力が高まっている」と指摘。将来の債務水準が現在予測されているよりもはるかに高くなる可能性があると考える十分な理由があるとの認識を示した。

債務予測は実際の結果を大幅に過小評価する傾向があり、5年先の債務の対GDP比率は当初予測より平均して10%高くなるとした。

また、米国や中国など重要な経済圏における成長の鈍化や資金調達条件の厳格化、財政・金融政策の高まりにより、債務はさらに大幅に増加する可能性がある。

これらの要因を反映した「最悪シナリオ(Severely Adverse Scenario)」では、世界の公的債務の対GDP比は3年で115%に達し、現在の予測よりも20ポイント高くなる。

<支出抑制>

IMFは堅調な成長と低い失業率という現在の環境は財政再建の好機だとして、財政再建の強化を改めて求めた。

しかし23年から29年までの6年間で平均してGDP比1%という現在の取り組みでは、高い確率で債務を削減または安定させるには不十分と指摘し、累計で3.8%の削減が必要との見方を示した。米国や中国など債務の対GDPが安定しないと予測される国では、さらに大幅な財政引き締めが必要になるとした。

米国、ブラジル、英国、フランス、イタリア、南アフリカなど債務が今後も増え続けると予想される国は、高いコストを伴う結果に直面する可能性があると指摘した。

IMF財政局副局長のエラ・ダブラノリス氏は、「調整を先延ばしにすれば、いずれはより大きな調整が必要になるだけだ」と述べた。「また債務が高水準で信頼できる財政計画もなければ、市場のネガティブな反応を招き、各国が将来のショックに対処する余地が狭まる可能性がある。従って待つことも危険だ」と語った。

公共投資や社会支出の削減は、燃料のような対象が不適切な補助金よりも成長に大きな悪影響を与える傾向があると述べた。課税基盤を拡大して税徴収の効率性を向上させたり、キャピタルゲインや所得への課税をより効果的にすることで税制の累進性を高めたりできると提起した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過去最高水準に
  • 4
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 9
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中