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アングル:中国から留学生急増、豪で寮やアパートがパンク状態
外国留学を届け出て登録された中国人約70万人は窮地の真っただ中にいる。政府が1月、これまでの方針を突如変更し、留学生として認める条件として現地で対面授業を受ける必要があると通達を出したからだ。写真は2月17日、ニューサウスウェールズ大学近くで建設中の学生向け宿泊施設(2023年 ロイター/Stella Qiu)
[シドニー 1日 ロイター] - 中国からオーストラリアのトップクラスの大学に留学しようとしているゾイ・チャンさん(25)は、学生寮やアパートなど滞在施設を見つけるのに悪戦苦闘している。あまりに物件が見つからず、「野宿」さえ考えてしまうほどだという。
チャンさんをはじめ、外国留学を届け出て登録された中国人約70万人は窮地の真っただ中にいる。政府が1月、これまでの方針を突如変更し、留学生として認める条件として現地で対面授業を受ける必要があると通達を出したからだ。
これが滞在施設への入居申し込み殺到という事態を招いた。世界中で賃貸住宅の家賃が高騰しているという事情に加え、特にオーストラリアは新学期が北米や欧州のように9月ではなく2月に始まるため、事態は一層深刻と言える。
オーストラリアを留学先に選んだ中国人学生はチャンさんを含めて約4万人。政府通達を受けて彼らが一斉に滞在先を探しており「もうパニックになった」とチャンさんは語った。
自宅のある山東省から電話取材に応じチャンさんは、「オーストラリアで賃貸物件を見つけるのは簡単ではないと分かっていたが、これほど厳しいとは思いもしなかった。1カ月ほど部屋探しを続け、今はもうお手上げ状態。やけくそな気持ちになれば、路上や橋の下、中国領事館の敷地の外だって眠ろうと思えば眠れる」と話した。
チャンさんは、ニューサウスウェールズ大学でマーケティングの修士課程を学ぶとして留学生登録をしている。
2020年に新型コロナウイルスの世界的な大流行が起きるまで、学生数の4分の1を中国から受け入れていたニューサウスウェールズ大学は、構内の滞在施設はもう満員で、現在は外国人学生向けに貸せるように大学のアパートを修繕中という。
学生の4分の1が中国人というシドニー大学の広報担当者も、大学近くにあるベッド数2400の学生寮は空きがなく、ベッド数700の外部施設を予約したほか、学生を格安価格で受け入れてくれるよう複数のホテルと交渉していると述べた。
ただ専門家は、留学を1学期遅らせるつもりの学生さえ、部屋を見つけるのは難航するかもしれないとみている。パンデミック期間に外国人学生向け滞在施設の建設プロジェクトの多くが凍結され、その工事完了には少なくともあと4年はかかるからだ。
不動産仲介会社サビリス・オーストラリア幹部のコナル・ニューランド氏は、これほど強い需要は過去に例がなく、学生にとっては全ての悪条件がそろった形だとの見方を示した。
<投資家には朗報>
一方でオーストラリアの学生向け滞在施設市場にとっては、コロナ禍の低迷局面から一気に活気づく展開になった。
2020年より前には、オーストラリアの外国人留学セクターの市場規模は年間400億豪ドル(270億米ドル)で、およそ40%を中国人学生が占めていた。しかし中国が感染対策として国境を閉ざすと、この比率は25%弱に低下。市場全体も半分に縮小した。この間、中国とオーストラリアの外交関係が冷え込んだことも逆風になった。
それだけに中国が「ゼロコロナ」政策を解除して経済再開を進めていることは、オーストラリアの留学生向け滞在施設の投資家にとっては「歓迎すべきサイン」だ、とAMPの多角化インフラ信託部門マネジングディレクター、ブラッド・ウィリアムズ氏は指摘した。同部門は、オーストラリア国内で第3位の学生専用入居施設オーナーだ。
また学生専用入居施設運営でオーストラリア最大手のユニロッジ・オーストラリアのトーマス・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は、一部のデベロッパーが割り増しの対価を支払ってでも施設建設工事を急いでいると語る。
中国本土から物件を探している学生のために、ブリスベーンで既に留学生活を送っているルイス・ルーさん(22)のように滞在施設の内覧代行を請け負う学生も出てきた。ルーさんの場合、1件当たり最高40豪ドルで、1日に2件の物件を内覧して撮影している。
ウエストパック銀行のエコノミストチームによると、ほとんどの外国人学生が利用することになる賃貸住宅の家賃は今年11.5%上昇する見通し。昨年の上昇率は約10%で、2年間としての伸びは過去最高に達するという。
シドニーのある不動産仲介業者は最近、中国人学生の母親にワンベッドルームの部屋を1週間当たり1050豪ドルで貸し出した。近隣地域で次に高い同規模の部屋の家賃をおよそ40%も上回る水準だ。この物件は昨年の家賃が540豪ドルだった。
この業者は「そこまで高額を申し出る必要はないと伝えたのだが、この母親は子どもが滞在する場所がなくなるのではないかと心から不安に感じ、契約をとても急いでいた」と明かした。
(Stella Qiu記者、Byron Kaye記者)