ニュース速報

ワールド

アングル:「何もかも高い」、米国への旅行者がドル高に悲鳴

2022年10月02日(日)07時39分

 9月29日、 英国人の電気技師ジェフ・スキッパーさんと大学事務管理職員、バレリーさん夫妻は今月、米サンフランシスコを旅行で訪れたが、その何週間も前から目にしてきたのはポンド/ドルが一直線に値下がりし続けるという救いがたい光景だった。写真はニューヨークを訪れた観光客。2021年11月撮影(2022年 ロイター/Carlo Allegri)

[サンフランシスコ/ニューヨーク/ロンドン 29日 ロイター] - 英国人の電気技師ジェフ・スキッパーさん(50)と大学事務管理職員、バレリーさん(47)夫妻は今月、米サンフランシスコを旅行で訪れたが、その何週間も前から目にしてきたのはポンド/ドルが一直線に値下がりし続けるという救いがたい光景だった。

ポンド安が進んだ結果、2人はただでさえ物価が高いサンフランシスコである程度贅沢しようと考えていたものの、幾つかの予定については、出費を切り詰めざるを得なくなった。

スキッパーさんは「私たちがここに来てからずっと、一番の話題は為替レートだ」と話す。バレリーさんも「何もかもが、とても高い。私たちは店内飲食をやめて生鮮食品店で食べ物を買っている。ポンドに換算すると全く値段相応とは言えないからだ。本当にお金がかかる」と、悲鳴を上げていた。

2人を含めて海外から米国にやってくる旅行者は、いずれもドル高に苦しめられている。中でも英国人は、ポンド急落のせいで痛手はさらに大きい。ポンド/ドルは26日に1.0327ドルと最安値を更新し、年初来の下落率は20%を記録した。

通信技術者の仕事を引退し、同じく妻とともにサンフランシスコを訪れた英国人のコリン・テーラーさんは「今は1ドルが1ポンドになり、私たちは大打撃だ。朝食の料金は50ポンド。英国なら20-25ポンドで済んだはずで、私たちには大変な値上がりになる」と嘆いた。

<何も買えず>

もちろんポンドだけでなく、ユーロ、円、その他多数の通貨が対ドルで下落している。主要6通貨に対するドル指数は28日に20年ぶりの高値を付けた。

アルゼンチンから妻や2人の娘とニューヨークへ旅行に来た公認会計士のホセ・アルバドさん(48)は「私たちは割安なレストランに入っている。ディズニーストアにも足を向けたが何も買っていない。一通り見て出て行くだけだ」と語った。

それでも米国旅行協会が今年6月に発表した見通しによると、新型コロナウイルス関連の旅行規制解除に伴って、米国をレジャー旅行で訪れる外国人の今年の支出額は物価調整後で870億ドルと、2019年の1450億ドルには届かないが、20年及び昨年の330億ドルを上回る。

また、一部の外国人旅行者は、ドル高のために楽しみが奪われるのを承知しないだろう。パリから米国に来たアプリデザイナーのジル・ノロルゲさん(48)は「是非ともニューヨークをエンジョイしなければ」と意気込む。

<懐豊かな米国人>

対照的に、ドルを懐に入れて海外旅行する米国人は、気軽にお金を使える。

ドルとユーロが20年ぶりに等価(パリティ)となった7月、米国人旅行者はパリで高額商品を「爆買い」し、ロンドンのウエストエンドでは割安価格でさまざまな「おもてなし」を堪能していた。

米国旅行アドバイザー協会が集計した消費者調査データに基づくと、米国人が国内と海外の旅行で今年支出する金額は19年比で11%増えている。

「使っているのは『はした金』という感覚になる」と話すのは、カリフォルニアからロンドンを訪れ、トラファルガー広場で取材に応じてくれたアームストロングさん(26)だ。

インドネシアのバリ島では、ロサンゼルスから来たジョニー・フォリンさん(39)が、ドル高のおかげでおいしい食べ物やドリンク、マッサージのサービスをそうでない場合よりもふんだんに享受できた、とうれしそうだった。

ドルは今年、インドネシアルピアに対して約7%上昇している。

(Noel Randewich記者、John McCrank記者、Alun John記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け

ワールド

米中間選挙、生活費対策を最も重視が4割 ロイター/

ワールド

ロシア凍結資産、ウクライナ支援に早急に利用=有志連
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中