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焦点:NZが米豪と安保連携強化、中国・ソロモン協定に反応
5月17日、 米英とカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国が機密を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」が中国に「物申そう」とする場面で、これまでニュージーランドは非常におとなしく、時には仲間に入らないケースもあった。写真は北京中心部に掲げられたソロモン諸島の国旗。2019年10月撮影(2022年 ロイター)
[ウェリントン 17日 ロイター] - 米英とカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国が機密を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」が中国に「物申そう」とする場面で、これまでニュージーランドは非常におとなしく、時には仲間に入らないケースもあった。そのため他の4カ国から、果たしてファイブ・アイズに関与する意思があるのかと疑われていたのが、ほんの1年前の状況だ。
だが、南太平洋の島国・ソロモン諸島と中国が安全保障協定に基本合意したことで、こうした態度を一変したように見える。
今やニュージーランドは、安全保障問題や南太平洋における中国のプレゼンス拡大に対する姿勢を強硬化させている。
専門家によると、中国がソロモンとの安保協定を通じて太平洋での戦略的基盤と軍事的影響力を強め、西側が及ぼす影響力が揺らぎかねないとの懸念が背景にある。
ビクトリア大学ウェリントン(VUW)戦略研究所のロバート・アイソン教授は、中国とソロモンの安保協定について「太平洋地域の行く末を巡るニュージーランドの考え方にとって、大きな試練になっている」と説明した。
アーダーン首相は同協定を「重大な懸念要素」と形容し、太平洋諸島フォーラム(PIF)でこの問題を協議しようと、ソロモン諸島に呼びかけた。
また、その後の米・ニュージーランド・ビジネスサミットで中国を念頭に「太平洋地域での自己主張と侵害のレベルが変わってきている」と危機感をにじませた。
<ソフトパワー>
ニュージーランドは対中国貿易への依存度が高く、中国との経済的な結びつきが強いため、以前はそうした批判を差し控える傾向があった。
だが、アーダーン首相やマフタ外相の発言を聞く限り、中国が太平洋の安全保障に首を突っ込んでいることに関し、ニュージーランドは米国やオーストラリアが持つ懸念を共有するという明確なシグナルを発している、とマッセイ大学防衛安全保障研究センターのアンナ・ポールズ氏は指摘した。
さらにポールズ氏は、ニュージーランドが太平洋諸島諸国向けには「地域の集団安全保障の取り組みを後押しする」、特に中国をはじめ地域以外の国向けには「太平洋の危機は自分たちで対処する」というメッセージも送っているとの見方を示した。
ニュージーランドは米国やオーストラリアよりも軍事力では見劣りするが、太平洋諸島諸国に及ぼす「ソフトパワー」がより強固なのは間違いない。国内に多くの太平洋諸島諸国出身者を抱え、これらの国と家族間の交流や企業取引、スポーツ・文化活動などを通じてしっかり結びついているからだ。
非政府組織(NGO)「パシフィック・コーポレーション・ファウンデーション」のプログラムマネジャー、デービッド・ベッフェ氏は、ニュージーランドと太平洋諸島諸国の関係は単にお金だけではなく、地域のニーズをくみ取り、理解することで成り立っていると主張。ニュージーランドの外交政策も「これをやるべきでない」という高圧姿勢から、相談に乗ってともに対応するという方向にゆっくりと進化していると付け加えた。
<連携に前向き>
マフタ外相は1年前、ニュージーランド政府としてファイズ・アイズの役割拡大に否定的な考えを表明したことから「一体やる気があるのか」と、他の4カ国から疑問を投げかけられた。
また、ニュージーランドは香港の民主派弾圧や新型コロナウイルスの起源問題に関する共同声明への署名に加わらず、批判を浴びた。
ただ、米国家安全保障会議のインド太平洋担当調整官、カート・キャンベル氏は今月、ニュージーランドが過去に安全保障リスクを過小評価したことが問題になる公算は乏しいとの見解を表明。その上で、ニュージーランドは世界全体に提示された課題が実は身近に存在し、自分たちに直接影響するのだと理解していると思うと発言した。
実際にニュージーランドは、既に日本と安全保障分野で連携を強化する計画を発表するなど行動を起こしている。3月末にはマフタ氏がフィジーを訪れ、共通の安全保障上の問題に関する情報交換を促進することなどを盛り込んだ協定に調印した。
19日に発表される新たな予算案では、太平洋地域関連の支出がより詳しく判明しそうだ。
VUWのアイソン氏は「ニュージーランドは米国やオーストラリアとかなり足並みがそろってきた。われわれが常に考えが一致しているわけではないし、オーストラリアほど(米国)と緊密に協調することも意味しないが、安全保障同盟におけるニュージーランドの足場は相当しっかりしている」と述べた。
(Lucy Craymer記者)