ニュース速報

ワールド

日中首脳が関係改善を確認、安倍首相は年内訪中へ

2018年05月09日(水)22時57分

 5月9日、安倍晋三首相と中国の李克強首相は都内の迎賓館で会談し、日中の関係改善の流れを確認した(2018年 ロイター/Kiyoshi Ota)

[東京 9日 ロイター] - 安倍晋三首相と中国の李克強首相は9日、都内の迎賓館で会談し、日中の関係改善の流れを確認した。両首脳は安倍首相が年内に訪中し、その後に習近平国家主席が訪日することで一致。自衛隊と人民解放軍の偶発的な衝突を回避する連絡体制の運用を開始することなどで合意した。

中国の首相が二国間会談のために訪日するのは8年ぶり。李首相は冒頭、「今はまさに波風が過ぎ去って晴天が現れ始めた」と語った。安倍首相は「今年は日中平和友好条約40周年という節目の年。日中関係の新しいスタートの年にしたい」と述べた。

日中関係は、日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡り2012年から悪化した。尖閣周辺では連日のように中国の公船が出現。東シナ海上空では自衛隊と人民解放軍の戦闘機が至近距離まで接近したり、海上では中国軍艦が自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射するなどの事案が発生した。

両国は武力衝突に発展しかねない不測の事態を回避するため、防衛当局間の連絡体制の構築を10年前から協議してきたが、今回の首脳会談で運用開始にようやく合意した。現場のパイロット同士、艦艇の乗員同士が事前に決められた手法で連絡を取り合うほか、防衛当局の幹部同士をつなぐホットラインを開設する。

安倍首相は会談後の記者会見で、「相互の信頼を醸成することで東シナ海を平和友好の海とする。10年越しの課題に結果を出せた」と語った。

このほか両首脳は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を念頭に、日中の企業が第三国で共同事業を進めるための官民協議体を設立ことで一致した。安倍首相が年内に訪中した後、習主席が訪日することも確認した。安倍首相は「日中の首脳同士が容易に往来できる関係を構築したい」と述べた。

李首相の訪日は、4月下旬の韓国と北朝鮮の首脳会談の直後、さらに米国と北朝鮮の首脳会談を控える時期に当たった。日本側の事後説明によると、安倍首相と李首相は北朝鮮の非核化が共通目標であることを確認。経済制裁を義務付けた国連安保理決議を完全に履行することで一致した。

さらに安倍首相は、日本人拉致問題の解決に向けて李首相に協力を要請した。李首相は日本と北朝鮮の首脳会談が実現することに期待を示した上で、「日本に関係する問題が解決することを歓迎したい」と語った。

(久保信博、竹中清※)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 10
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中