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訂正:ロイター企業調査:貿易紛争4割に影響、日米FTAの賛否きっ抗

2018年04月24日(火)16時02分

 4月23日、ロイター企業調査によると、米国による鉄鋼・アルミ製品への高関税をはじめとする貿易紛争が事業に影響する懸念があると回答した企業が4割にのぼった。写真は安倍首相とトランプ米大統領。米フロリダ州で18日撮影(2018年 ロイター/Joe Skipper)

[東京 23日 ロイター] - 4月ロイター企業調査によると、米国による鉄鋼・アルミ製品への高関税をはじめとする貿易紛争が事業に影響する懸念があると回答した企業が4割にのぼった。トランプ米大統領が積極姿勢を示している日米2国間の自由貿易協定(FTA)への賛否はきっ抗した。米国による輸入制限などへの懸念は強いものの、為替条項導入への抵抗感があるとの回答はさほど多くなかった。

この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業542社(訂正)を対象に4月4日─17日に実施。回答社数は240社程度。

米トランプ大統領は鉄鋼・アルミ製品の輸入に高関税をかける措置や、中国による知的財産権侵害への制裁措置などを発表。中国も報復措置を公表した。

こうした貿易紛争に伴い、事業に直接・間接の影響が出ることを懸念しているとの回答は「大いにある」「ある程度ある」を合わせて40%を占めた。特に影響度が大きい業種は「輸送用機器」で77%、「金属・機械」も62%が懸念を示している。

企業からは「鋼材が主原料のため市況の変動が業績に直結する」(金属製品)、「米国子会社での自動車製造コスト上昇で、米景気が悪化する」(輸送用機器)といった懸念が示されている。また、米中貿易摩擦を受けた「中国景気減速による受注の落ち込み」(機械)など、中国経済の動向に気をもむ企業が多数ある。

また、トランプ大統領は日本に2国間貿易協定締結を求める発言をしているが、米国による輸入規制措置などを回避するため、日米FTAを結ぶべきかどうか聞いたところ、結ぶべきと「思う」との回答と「思わない」との回答が50%ずつできっ抗した。

FTAに賛成の立場からは「米国向け輸出拡大と輸入増による消費者メリット、国内産業の淘汰など競争力向上」(輸送用機器)などの効果に期待するコメントも寄せられているが、むしろ「TPP(環太平洋連携協定)等多国間の枠組みと同様の内容で締結ができるなら」(運輸)、「不平等協定でなければ」(化学)といった条件付きで賛成する声が多い。

一方、反対意見では「個別に対応すると不利」(食品)との声が圧倒的に多い。

FTA交渉で心配なテーマについては「米国による輸入制限」への懸念が最も多く、35%となった。次いで「日本での米製品の輸入枠設定など」が21%だった。

企業の間ではトランプ大統領へのいら立ちが見られると同時に、日本政府の交渉能力への不安もくすぶっている。「貿易交渉を理由に同盟関係の見直しを迫るという論理を米国が振りかざせば、世界中の同盟国を不安に陥れる」(電機)、「自己主張ができない日本政府に対米交渉力能力はない。内向きに右往左往している」(機械)といった意見も寄せられている。

他方で、為替介入の透明性を求める「為替条項導入」を懸念するとの回答は18%にとどまった。農産物市場開放は12%、車の非関税障壁撤廃についても10%と、懸念する回答は少ない。

日本を巡る各国との通商協定のうち、日本経済に最も効果が期待できると思われている協定は「TPP11」との意見が58%を占め、最も多かった。「日米FTA」は11%、中国やアジア諸国が参加する「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が9%、「日中韓FTA」が6%、「日欧EPA(経済連携協定)」は3%となった。企業は、多国間貿易協定にメリットを見出していることがうかがえる。

*23日配信の記事で、調査対象企業数を「400社」から「542社」に訂正します。

(中川泉 編集:石田仁志)

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