IMF、中東紛争で世界成長見通し引き下げ 原油高騰続けば景気後退も
国際通貨基金(IMF)本部で2024年撮影 REUTERS/Benoit Tessier/File Photo
David Lawder
[ワシントン 14日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は14日、世界経済見通し(WEO)を発表し、中東紛争に起因するエネルギー価格急騰と供給混乱を理由に成長率予想を引き下げた。紛争が深刻化し、原油価格が2027年末まで1バレル=100ドルを超える水準にとどまれば、世界経済は景気後退の瀬戸際に立たされると警告した。
IMFは情勢の展開に応じて「弱含み(weaker)」「悪化(worse)」「深刻(severe)」の3つの成長シナリオを提示した。
国・地域別成長予測の前提であり、最も楽観的な「標準シナリオ」では、イラン紛争が短期間で終結すると想定し、2026年の世界の成長率(実質GDP伸び率)を3.1%と予測した。前回1月予測から0.2ポイントの下方修正となる。このシナリオでは、26年通年の原油価格を平均82ドルと想定し、足元の北海ブレント先物の約100ドルから下落を見込む。
IMFは、中東紛争がなければ、テック投資ブームの継続、金利低下、米国の関税措置が当初の想定ほど厳しくならなかったこと、一部の国の財政支援策を踏まえて、予測を0.1ポイント上方修正して3.4%にしていたと述べた。
しかし、イラン情勢は1年前のトランプ米政権の第1弾関税措置よりもはるかに大きなリスクを世界経済にもたらしていると、IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏がロイターのインタビューで指摘。「湾岸地域で起きていることは、潜在的にはるかに、はるかに大きな影響を持つ。われわれのシナリオはそれを示す」と述べた。
「悪化シナリオ」では、紛争が長期化し、原油価格は26年が100ドル前後、27年は75ドルで推移し、世界成長率は26年に2.5%に低下すると予測する。1月時点では26年の原油価格を約62ドルと予測していた。
<深刻シナリオでは多くの国が景気後退>
最も見通しが厳しい「深刻シナリオ」では、紛争が長期化、深刻化し、原油価格の大幅な上昇により金融市場に大規模な混乱が生じ、金融環境が引き締まると想定し、世界成長率が2.0%に落ち込むと予想した。「世界的な景気後退に極めて近い水準」とし、80年以降、成長率がこの水準を下回ったのは4回のみで、直近2回は金融危機後の09年とコロナ禍の20年だったと説明した。
グランシャ氏は、このシナリオでは多くの国が完全な景気後退に陥ることになると述べた。原油価格は26年が平均110ドル、27年は125ドルと想定し、この水準が長期間続けば「インフレが定着するとの期待」も高まり、より広範な物価上昇や賃上げ要求につながると指摘。「インフレ期待の変化により、中央銀行はブレーキを踏み、インフレを押し下げざるを得なくなる」とし、22年よりも痛みを伴う可能性があると述べた。
一方で、エネルギー価格の高騰が短期間にとどまれば、中銀は一時的な変動として静観することが可能で、景気減速の中で金利を据え置くことができるとした。これは事実上の金融緩和だが、インフレ期待が安定していることが条件となる。
26年の世界のインフレ率予測は、標準シナリオで4.4%、深刻シナリオで6%を超える。
<米国はAIブームの恩恵>
26年の米国の成長率予想は2.3%とし、1月から0.1ポイントの小幅な引き下げにとどめた。減税のプラス効果、利下げの時間差での効果、人工知能(AI)データセンター投資の継続が、エネルギーコスト上昇を一部相殺するとした。こうした効果は27年も続くと予想し、27年成長率は2.1%と、1月から0.1ポイント上方修正した。
ユーロ圏の成長率予想は、26年、27年ともに0.2ポイント引き下げ、それぞれ1.1%、1.2%とした。22年のロシアによるウクライナ侵攻に起因するエネルギー価格高の影響が今も続く中で中東紛争がさらなる打撃となっている。
日本については、26年が0.7%、27年が0.6%で1月予想を維持した。ただ、日銀が半年前の想定よりもやや速いペースで利上げを行うと予想していると述べた。
中国は、26年を4.4%と予測し、1月から0.1ポイント引き下げた。エネルギー・商品コストの上昇が、米国の関税率引き下げや政府の景気刺激策によって部分的に相殺されるとした。27年は1月時点と同じく4.0%に減速すると予想。不動産セクターの低迷、労働力の減少、投資収益率の低下、生産性の伸び鈍化が逆風とした。
<新興国・中東に大きな打撃>
新興市場・途上国は、先進国よりも中東紛争による打撃が大きいとして、26年成長率は0.3ポイント下方修正して3.9%とした。
影響が最も顕著なのは紛争の震源地である中東・中央アジア地域で、広範なインフラ被害とエネルギー・商品輸出の急激な減少により、26年成長率は1.9%と2ポイント引き下げた。国別ではイランがマイナス6.1%、カタールがマイナス8.6%、イラクがマイナス6.8%、クウェートがマイナス0.6%、バーレーンがマイナス0.5%と予測した。
ただし、紛争が短期間で終結するというシナリオ下では、同地域は急速に回復すると予想。27年成長率は4.6%と1月予測から0.6ポイント上方修正した。
新興国の中で見通しが明るいのはインドで、26年、27年ともに約0.1ポイント上方修正され6.5%となった。昨年終盤の力強い成長勢いと、米国との関税合意などが寄与する。
<エネルギー高対応の財政措置にくぎ>
IMFは、エネルギー価格高に対応した、価格上限、燃料補助金、減税などの財政措置を各国が講じようとすることについて、依然として高水準にある財政赤字と公的債務の増大を踏まえてくぎを刺した。
グランシャ氏は、最も脆弱な層を守ろうとすることは「全く正当だ」としつつも、ある国での補助金が、それを負担できない他の国での燃料不足につながる可能性があると指摘。「非常にターゲットを絞り、非常に一時的な形で行う必要がある。大半の国が財政バッファーを再構築するために必要とする財政の枠組みを損なってはならない」と語った。





