イラン攻撃開始後の新興国債発行ほぼゼロ、先行き不安で活況一変
Libby George
[ロンドン 27日 ロイター] - 今年1-2月に記録的ペースで増大してきた新興国の債券発行は、米国・イスラエルのイランへの攻撃以降ほとんどゼロになっている。先行き不安が市場に混乱をもたらし、借り入れコストも押し上げられたからだ。複数の銀行関係者や投資家がロイターに語った。
つい1カ月前まで、関税問題や他の地政学的な波乱要素があったにもかかわらず新興国債には旺盛な需要があった。
JPモルガンのCEEMEA債券資本市場を統括するステファン・ウェイラー氏の試算では、3月に入って発行が途絶えたものの、1-2月にサウジアラビアやメキシコ、トルコなどの起債が進んだため、第1・四半期の新興国債発行額は過去最高を更新する流れだった。
年初からこれまでの新興国におけるソブリン債と社債の発行総額は1175億ドルと、昨年第1・四半期を30億ドル近く上回っている。
しかし、シティの中東欧・中東・アフリカ(CEEMEA)債券ファイナンシング共同責任者を務めるビクター・ムーラッド氏は「あらゆる資金調達協議は進行中だが(市場は)慎重な様子見モードを伴っている。特に大口のしっかりした発行体は必要なら調達可能であるものの、プレミアムが乗る形になる」と説明した。
例外的存在はアンゴラで、イラン攻撃後に信用スプレッドが縮小した中で起債による資金調達に成功した。産油国という立場から、原油価格高騰が追い風になったとみられる。
ただ、他の多くの新興国が置かれた状況はずっと厳しい。バンク・オブ・アメリカによると、19日までの週に新興国債市場からは33億ドル、高利回り債市場からは50億ドル余りが流出した。高利回り債からの流出額は、トランプ米大統領が「相互関税」を打ち出した昨年4月以来の大きさだという。
イラン情勢を受け、エジプトやトルコなどの信用スプレッドは、エネルギーや食品の価格上昇が特に痛手となる恐れが嫌気されて拡大した。
JPモルガンの算出するドル建て新興国債と米国債の利回り格差は2月終盤以降で17ベーシスポイント(bp)開いて268bpに達し、エジプトとトルコの拡大幅はそれぞれ44bpと36bpだった。
対照的にアンゴラのスプレッドは同期間で39bp縮小した。
米国・イスラエルとイランの交戦の先行きが全く読めなくなったため、投資家は大半の資産に関して大規模なポジションの構築には慎重だ。
ただ複数の銀行は、とりわけ新興国市場のオーバーウエート・ポジション圧縮に動いている。
ソシエテ・ジェネラルのマルチ資産ストラテジスト、マニシュ・カブラ氏は「イラン攻撃開始後われわれが行った唯一の大規模な(ポジション)修正はコモディティーの積み増しと新興国資産のオーバーウエート比率削減だ」と話す。
不確実性が長期化すれば、新興国にとっては市場を通じた起債以外の資金調達手段、例えば私募や「トータル・リターン・スワップ」など複雑な手続きを要する直接借り入れの妙味が増す可能性がある。
JPモルガンのウェイラー氏は、市場が機能しにくい局面では借り手にとって私募取引の関心、ないしは妥当性が高まるのが普通だと説明する。
もっともウェイラー氏やシティのムーラッド氏は、格付けが高いペルシャ湾岸諸国のソブリン債は流通市場で買われており、紛争が落ち着けば新興国債への需要が持ち直す素地はあるとみている。
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