焦点:くすぶる円安圧力、「投機」判断難しく 原油高ではG7が足並み
写真は円紙幣のイメージ。2017年6月撮影。REUTERS/Thomas White
Takaya Yamaguchi Makiko Yamazaki
[東京 13日 ロイター] - 円安圧力が再びくすぶってきた。主要7カ国(G7)は中東情勢悪化に伴う原油急騰に足並みをそろえて対処する姿勢を示したが、イラン側はさらなる原油高を警告し、抗戦の構えを崩していない。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿ったドル買いの流れを「投機」とは判断しにくく、通貨当局は難しいかじ取りを迫られそうだ。
<迫る160円台>
12日の外国為替市場で、円が対ドルで一時159円台を付けた。その後も円売りの流れは止まらず、159円台前半と約2カ月ぶりの円安水準で推移している。
円は、1月23日にも159円前半まで売られていたが、日米がレートチェックなどで連携する姿を示し、それ以降は円高含みで推移していた。
ただ、米国とイスラエルが2月28日にイランへの軍事行動に踏み切ったことをきっかけに機運が一変。金融市場が世界的に動揺する中、顕在化したのが「有事のドル買い」だった。
足元の為替動向について、複数の政府関係者は「円安というよりドル高」と口をそろえる。動揺の起点となった原油高には、国家備蓄の放出という形でG7が協調して対処した。
ただ、イラン側は原油価格が1バレル=200ドルに達する事態に備えるべきだと警告し、収束の兆しは依然としてみえない。「目先は円安に振れやすい状況が続き、一時的に1ドル=160円を超える場面もありそうだ」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミスト)との受け止めが目立つ。
<介入なら株安も>
ドル買いの流れは、リスク回避に伴う有事のドル買いにとどまらず、利下げ期待の後退など米国のファンダメンタルズに沿った動きとの指摘も少なくない。
「積極的に円を売る動きが出ているわけではない。投機的な円売りもみられていない」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の龍翔太・為替ストラテジストは語る。2022年や24年の為替介入局面に比べれば、売り建玉は膨らんでいないという。
こうした状況下では、当局による為替介入を正当化しづらいとの見方も強い。「投機的なポジションがたまっていない中で無理に介入すれば、かえって投機筋を刺激し、反撃されかねない」と、前出の龍氏は指摘する。
株価への影響を指摘する声も出ている。
「実弾介入に踏み切る場合には、少なくとも150円割れまでドル/円を押し下げる必要があるが、そこまでの円高化は株安をもたらすリスクがあり、高市早苗政権はそれを望んでいないだろう」と、みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは言う。
<遠い「抜本策」>
過去を振り返れば、「有事の円買い」も支えとなり、石油危機に伴う経済影響の一部を吸収できたが、現状ではこうした副次的効果には期待できない。
政府は、石油の国家備蓄を先行して放出するのと併せ、ガソリン補助などの追加策を講じる方針だが、「26年度補正予算案の構想は宙に浮いている」(前出と別の政府関係者)とされる。予備費の使用だけでは対症療法に過ぎず、抜本策とは程遠い。
あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは「円安による物価押し上げを懸念して(日銀が)利上げする可能性は高まってきている」と語る。「今のところ7月の利上げが自然と思っているが、円安圧力が強いようだと4月に前倒しされてもおかしくはない」と、諸我氏は言う。
為替対応を巡り、片山さつき財務相は13日の閣議後会見で「原油価格が高騰する中、国民生活への影響を念頭にいかなる時、いかなる場合も万全の対応を取る」と述べた。ただ、実弾介入が難しいのではとの市場の見方に対しては「コメントを差し控える」と明言していない。





