マクロスコープ:高市演説の「目玉」に期待と不安、予算大改革が意味するもの
国会での所信表明演説の模様。2月20日撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 20日 ロイター] - 高市早苗首相は20日、就任後初めての施政方針演説に臨んだ。真っ先に訴えたのは金看板でもある「責任ある積極財政」だ。実現に向けた手段として「予算編成の大改革」も掲げた。複数年度予算や多年度別枠管理の仕組みの導入を図るという。ただ、制度設計の具体像はまだ見えず、メリットやデメリットに関する議論はこれからだ。市場の関心も高い「目玉政策」だけに、自民党内や専門家の間には期待と不安が渦巻いている。
<軽んじられてきた「緊要性」>
「毎年補正予算が組まれることを前提とした予算編成と決別し、必要な予算は可能な限り当初予算で措置する」。高市氏は演説の中でこう述べた。夏までに策定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に向けて議論を進め、2027年度予算での実現を目指す考えだ。「約2年がかりの大改革だ」と意欲をにじませた。
補正予算は財政法上、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出又は債務の負担を行うため必要な予算の追加を行う場合」などに認められる。
にもかかわらず、長らく「緊要性」は軽んじられ、当初予算で削り込んだ公共事業や社会保障、防衛関連などの政策的経費を補う意味合いが強いとされてきた。「時の政権の『色』が垣間見える」として注目される反面、財政悪化の一要因とも言われる。規模や費目が毎年変わり、時の経済状況や政治情勢にも大きく影響を受けるため、予算を使う側からすれば予見可能性に乏しいとも指摘されるところだ。
<一本化、複数年度化への期待>
高市氏が演説の中で改めて強調したのが、補正予算に頼らない当初予算への一本化だ。その年度に必要となる財源は可能な限り当初予算で措置し、補正予算の編成を前提としない仕組みに改めるという。自民党の参院議員は「事業を行う地方自治体や民間事業者にとっては予見可能性につながる。ぜひ実現してほしい」と期待を口にした。
さらに高市氏は、事業者の研究開発や設備投資を促すため、複数年度予算や長期的基金の導入にも取り組む。経済官庁幹部によると、「危機管理投資」や「成長投資」に該当する特定の分野について、特別会計のように別枠で複数年度管理ができる仕組みの導入を検討している。高市氏が掲げる「戦略17分野」のうち、造船や半導体などが候補となる可能性があるという。
佐藤啓官房副長官は記者団の取材に「今後、予算編成改革の議論の中で詳細を詰めていく」としつつ、「基金の活用や既存の(特別会計などの)仕組みの活用に加え、新たな仕組みづくりも議論していく必要がある」と述べた。
<自民党内や専門家から懸念も>
一方、詳細な制度設計が見えないことへの不安もある。自民の政務三役経験者は「インフラ関連は単年度では完成しないし、国が複数年度投資することをコミットしないと民間も投資に乗ってこない。その意味では予算の複数年度化はインフラを対象とするなら望ましいことだ」とする一方、「予算の単年度主義は憲法の規定で、戦前の野放図な軍備拡張、財政破綻への教訓として盛り込まれたものだ」と指摘。「放漫財政にならないよう、建設が長期にわたり、かつ国の資産となる案件に限定して運用すべきだ」と注文を付けた。
SBI証券チーフ債券ストラテジストの道家映二氏は「投資は通常1年で終わらないので、複数年度で予算を組むのは筋がとおっている。国土強靭化もそうだったので、おかしくはない」と前置きした上で、「重点投資の対象が17分野というのは多すぎる。本当に重要な分野に絞ったほうが、それぞれ大きな額の投資ができる。様々な分野に財源をばらまきたいだけに見えてしまう」と懸念。「マーケットとしては、高市政権が何をしたいのか結局まだよくわからない。複数年度化を打ち出されても評価のしようがないため、反応はしないと思う」と述べ、制度の具体像が明らかになるまで様子見が必要になるとの認識を示した。
金利上昇は一時期に比べて落ち着く一方、為替は不安定な動きが足元でも続いている。先の衆院選で与党が圧倒的多数を占め、長期安定政権が現実味を帯びているとは言え、一つ誤れば市場は混乱を深めかねない状況だ。こうした不安定さを自覚してか、高市氏は演説で「マーケットからの信認を損なう野放図な財政政策をとるわけではない。行政改革を進めた上で戦略的な財政出動を行っていく」と強調した。「財政規律にも十分配慮した財政政策こそが、高市内閣の『責任ある積極財政』だ」
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)
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