アングル:長期金利、27年ぶり水準でも達成感なし リスク許容度低下で上昇止まらず
写真は円紙幣。都内で2024年7月代表撮影。REUTERS
Mariko Sakaguchi
[東京 20日 ロイター] - 高市早苗首相が衆院解散を表明し、時限的な消費減税を示唆したことで、債券市場では財政拡張懸念が強く意識され、長期債・超長期債への金利上昇圧力が強まっている。長期金利が1999年に付けた2.44%を超えた場合、心理的な節目となる2.5%でいったん落ち着くのか、市場の関心が集まる中、3%も視野に入るとの見方も出ている。
<与党の消費減税検討、ゲームチェンジャー>
高市早苗首相が19日の解散表明会見で、消費減税の検討を加速すると説明し、市場では「与党からも消費減税に前向きな姿勢が示され、ゲームチェンジャーとなった」(国内銀の運用担当)との声が上がった。将来的な投資という意味合いでの財政拡張ではなく、短期的な物価対策で財政だけが悪化していくという見方が広がったという。
20日の円債市場では、新発10年債利回りが一時2.350%と、1999年2月以来の高水準を更新した。19-20日の2日間で長期金利は13.5ベーシスポイント(bp)上昇するなど、金利上昇ペースの速さが目立つ。SBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は「買う材料がない上に、金利上昇のスピードがこれだけ速いと、金利水準のレベル感だけで市場参加者が手を出すことは難しい」と指摘する。
高市首相は、軽減税率が適用されている飲食料品を2年間、消費税の対象としないとする連立合意に触れ、実現へ向け検討を加速する考えを示した。もっとも、市場ではその財源の確保に懐疑的な見方が根強い。「財源の議論がないまま、消費減税が現実的になれば、結果的に国債増発につながるとの不安感が広がっている」(国内証券ストラテジスト)という。新発債は10年に限らず、5年、20年、30年、40年債と、複数の年限で利回りがいずれも過去最高水準を更新した。
「ボラティリティーの高さもあり、市場参加者の買い手が細ってしまう」と三井住友トラスト・アセットマネジメントのシニアストラテジスト、稲留克俊氏はみる。
<安定的な買い手見当たらす>
高市氏が自民党総裁に選出された秋口から債券市場では徐々にボラティリティーが高まり、首相就任後の昨年12月時点ではすでに、一部の国内投資家は売りに転じていた。
日本証券業協会が20日発表した12月分の公社債店頭売買高によると、生損保勢の超長期債の売り越しは8224億円。三井住友TAMの稲留氏によると、同統計でさかのぼることができる2004年以降で最大の売り越しとなったという。低利回りのオフ・ザ・ラン(既発債)の売りが主因とみられ、例年通りなら期末を控えた2―3月に売りが膨らむことが多く、今後も売りが続く可能性がある。
都銀勢は中長期債を計1兆8552億円と大幅に売り越していた。長期金利が2%を超えれば一定の買いが入るとの見方に反して売り越しとなったことで、買い目線が以前よりも上がっていることが示された格好だ。
一方、国債の最大の買い主体は外国人で、割安感を背景に中長期・超長期債のいずれも買い越しが続いている。この流れが続くかは不透明で「財政拡張懸念など嫌気されれば、売りに転じる可能性が高い」(別の国内証券ストラテジスト)という。
<リスク許容度が低下、金利リスク落とす動き継続か>
警戒感が強い中でこの日に実施された20年債入札結果は、弱めの結果と受け止められ、円債は買い戻される場面もあったがその後、再び売り圧力が強まる不安定な相場つきとなった。「24年・25年ゾーンのオフ・ザ・ラン(既発債)の売りが目立つ」と国内証券の債券セールス担当者は話す。含み損が膨らんでいる市場参加者が一定程度いるとみられ、金利低下の局面では再び売りが出やすいという。
SBI証の道家氏は「金利リスクを落とす動きとなりやすい」と指摘する。長い債券を売り、短い債券を買う、デュレーション短期化の動きが出ているという。日本の政治や財政政策を巡る不透明感に加え、期末を控えてリスク許容度が低下しており、こういった動きも金利上昇が止まらない要因だ。
2月8日の衆院総選挙の結果を見極めるまで約2週間。その間に1月28日に40年債入札、30日に2年債入札、2月3日に10年債入札、5日に30年債入札と供給イベントが相次ぐ。日銀の利上げ継続路線に財政拡張懸念が加わることで、金利の上昇トレンドは続くとの見方が強い。
長期金利は一つの節目として意識される2.44%を超えれば、心理的節目の2.5%が視野に入る。同水準はチャート的にも節目とされ「いったん金利上昇が止まる可能性はある」(道家氏)というが、金利先高観がぬぐえない中では「3%に向けた上昇が意識される」と道家氏は話している。
(坂口茉莉子 編集:平田紀之 石田仁志)
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