ニュース速報
ビジネス

日本国債の大規模入れ替え計画せず、金利上昇で含み損=住友生命・25年度下期運用計画

2025年10月27日(月)16時15分

 住友生命保険は2025年度下期の一般勘定運用で、含み損が膨らむ日本国債について、大掛かりな入れ替えは計画しておらず、上期に続いて数百億円規模にとどまるとの見方を示した。写真は同社ロゴ。2009年8月に都内で撮影(2025年 ロイター)

Tomo Uetake

[東京 27日 ロイター] - 住友生命保険は2025年度下期の一般勘定運用で、含み損が膨らむ日本国債について、大掛かりな入れ替えは計画しておらず、上期に続いて数百億円規模にとどまるとの見方を示した。また国内金利の大幅上昇を受け、上期末に公社債の減損損失を計上したことも明らかにした。

増田光男執行役員・運用企画部長が27日、運用方針説明会で明らかにした。

同社の運用資産の主軸となる「日本国債等」は、10年超の国債を中心に投資を行うが、円建て負債に対応させる目的で長期保有するものは「デュレーションを維持するよう金利上昇局面で投入」するにとどめる方針。

上期はマッチング目的の投資額自体は保有国債の償還額を下回ったものの、機動的運用を行うポートフォリオで内外株式を売却して購入した分が寄与し、日本国債の残高は数千億円規模で増加。ただ下期は「現時点の計画では大掛かりにリスク性資産を落として国内債券やヘッジ付き外債にシフトする予定はない」(増田氏)として、上期のような内外株式からの資金シフトは見込んでいない。

住友生命によると、9月末時点の有価証券の含み損は速報値ベースで900億円と、3月末時点の1400億円から縮小。公社債の含み損が3月末の1兆5100億円から1兆9900億円に拡大(4700億円の悪化)した一方、株式等の含み益も3月末の1兆6700億円から2兆1300億円に拡大(4600億円の改善)し、ほぼ相殺し合ったことなどが奏功した。

同社はまた、国内金利の上昇に伴い含み損が拡大した公社債の一部について、上期末に減損損失を計上したことを明らかにした。増田氏は金額についてはコメントを控えるとした上で「金利上昇で国内債券の含み損が拡大する一方、保険負債の時価も同程度減少しているため、会社の健全性には全く問題ない」と説明。減損処理をした公社債は日本国債ではないという。

さらに過去に購入した低利回りの日本国債を売却してより金利の高い銘柄を購入する「入れ替え」について、増田氏は「大掛かりな入れ替えはしていない」として、上期は数百億円規模だったが、下期も同程度の規模にとどまるとの見方を示した。

日銀の金融政策について、住友生命では「日銀は利上げ路線を継続するものの、関税や米国経済の不透明感が残る中では慎重なスタンスで利上げタイミングを計ると予想される」として、今年度の利上げは12月か1月のあと1回にとどまる」と想定。その後は「インフレ等の状況を確認しつつ年1回のペースで利上げを行い、ターミナルレートは1.25%」とのシナリオを描く。

利上げ観測は中長期的には長期金利への上昇圧力となるが、目先についてはおおむね織り込まれていることもあり、年度内の10年金利はもみ合い推移となり、年度末は27日時点の1.66%から横ばい圏の1.70%で着地すると予想。30年金利についても、足元の3.06%から横ばい圏の3.10%とみている。

外国債券のうち、為替リスクをヘッジしないオープン外債は金利や為替動向次第で柔軟に対応するとして、増減は決めていない。

ヘッジ付き外債のうち事業債は、固定金利の米国事業債などの売却により上期は残高が減少したが、下期はCLO(ローン担保証券)や海外プロジェクトファイナンスなどの変動金利資産を中心に積み増す計画。一方、ソブリン債は上期には内外株式からのシフトにより増加させたが、下期については残高は横ばいとする方針。

国内株式と外国株式はいずれも株価動向次第だが、現時点では上期のような規模のシフトは計画していない。オルタナティブはインフラエクイティやPE(プライベートエクイティ)ファンドへの段階的な投資により残高を増加、不動産は投資用不動産への投資により微増とする計画だ。

住友生命の一般勘定の資産残高は、3月末時点で36兆0315億円。うち外貨建て資産は10兆4845億円(29.1%)。

2025年度下期の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。

日本国債10年物利回り  1.10―2.10% (1.70%)

日本国債30年物利回り  2.50─3.50% (3.10%)

米10年国債利回り    3.60―4.60% (4.10%)

日経平均株価       4万3000―5万4000円 (5万円)

NYダウ         3万8000─5万ドル (4万7000ドル)

ドル/円         135―155円 (145円)

ユーロ/円        155―180円 (170円)

(植竹知子)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豪コアインフレ率、第3四半期0.9%なら予測「大外

ワールド

独IFO業況指数、10月は88.4へ上昇 予想上回

ワールド

ユーロ圏銀行融資、9月は企業・家計向けとも高い伸び

ワールド

ユーロ圏企業、事業見通し楽観 インフレ上振れリスク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中