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マイナス金利解除は来年4月、来夏から段階的な利上げへ=早川元日銀理事

2023年11月14日(火)14時02分

早川英男元日銀理事(東京財団政策研究所主席研究員)は14日、ロイターのインタビューに応じ、日銀は来年4月にマイナス金利を解除したのち、3カ月に1回程度のペースで段階的な利上げ局面に入ると予想した。写真は日銀本店。東京で9月撮影。(2023年 ロイター/Issei Kato/File Photo)

Takahiko Wada Leika Kihara

[東京 14日 ロイター] - 早川英男元日銀理事(東京財団政策研究所主席研究員)は14日、ロイターのインタビューに応じ、日銀は来年4月にマイナス金利を解除したのち、3カ月に1回程度のペースで段階的な利上げ局面に入ると予想した。

賃金・物価の好循環はすでに生じており、来年の春闘で賃上げの確証が得られれば、ビハインド・ザ・カーブになっている政策が市場の予想以上に早いペースで修正されていくとの見通しを示した。

植田和男日銀総裁は、物価上昇の要因を輸入物価上昇の転嫁に由来する「第1の力」と賃金・物価の好循環による「第2の力」に分類。第2の力が「まだ少し弱い」ことが金融緩和継続の理由だと説明している。

これに対して早川氏は、日銀の展望リポートで2023年度の生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数(コアコアCPI)の見通しが段階的に引き上げられ、10月時点で前年度比プラス3.8%と、1月の同プラス1.8%から2%ポイントも引き上げられたことに注目。「足元で物価を押し上げているのは第1の力ではなく第2の力なのが明白だ」と話した。コストに占める人件費の比率が大きいサービス価格は「ここ1年くらいで猛烈に上がっている」とも述べた。

早川氏は、賃金上昇を伴う物価目標の実現を掲げる日銀にとって、来年の春闘での賃上げという「物証」だけが必要な状況だと指摘。春闘の集中回答などを踏まえた上で、展望リポートを改訂する4月に、マイナス金利を解除する可能性が高いとの見通しを示した。「経済界から出てくる発言を見ていれば、来年の春闘での賃上げ率が今年より低いという感じではない」と述べた。

来年4月にマイナス金利を解除した後は再度「来年の半ばくらいに、市場が思っているより早めの(政策金利)引き上げが必要だと思う」と語った。日銀は「今は意図的にビハインド・ザ・カーブになっている」とし、来年の春闘で賃上げの持続が確認できれば、そこからの利上げペースは早く、3カ月に1回程度の利上げを予想している。

市場ではマイナス金利解除後はゼロ金利が続くとの予想が多い。早川氏は日銀と市場のコミュニケーションが重要になり、今年終わりぐらいから、マイナス金利解除やその後の利上げ局面入りに向けた地ならしを進めていくべきだと述べた。

10月のイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用再柔軟化については、YCCの「事実上の撤廃」だとした。来年4月にマイナス金利を解除した場合でも、YCCはそのまま維持されるとの見方を示した。

連続指し値オペで厳格に10年金利の上限を規定する手法をやめたことで、政府の為替介入のように、急激な上昇が起きれば国債買い入れで金利上昇を抑えに行く仕組みになったと話した。

日銀が金融正常化を進めるに当たっての「障害」になりうる事項としては、今年3月に起きた米国の金融不安が再び起きるリスクを挙げた。

(和田崇彦、木原麗花)

ロイター
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