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アングル:UBSが米国で積極採用、富裕層向け事業てこ入れ

2023年07月04日(火)11時55分

 スイスの金融大手UBS は、クレディ・スイスの救済買収に伴い全世界で人員の30%削減を検討する一方、米富裕層向け事業をてこ入れすべく米国でファイナンシャルアドバイザーの採用を積極的に進めている。チューリヒの本社で2022年10月撮影(2023年 ロイター/Arnd Wiegmann)

[ニューヨーク 3日 ロイター] - スイスの金融大手UBS は、クレディ・スイスの救済買収に伴い全世界で人員の30%削減を検討する一方、米富裕層向けウェルスマネジメント事業をてこ入れすべく米国でファイナンシャルアドバイザーの採用を積極的に進めている。

UBSは今年上半期にバンク・オブ・アメリカ傘下のメリルリンチ、JPモルガン・チェースが最近買収したファースト・リパブリック・バンク、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなどからファイナンシャルアドバイザー50人を引き抜いた。このうち30人はUBSが3月にクレディ・スイスの買収を発表した後の移籍で、メリルで25億ドルを管理していた13人はチームごと引き抜いた。

UBSはクレディ・スイス買収によりウェルスマネジメント事業で世界2位となった。欧州とアジアでは業界トップだが、米市場は国内銀行に握られ、4位に甘んじている。

UBSのグローバル・ウェルスマネジメント担当社長で取締役会メンバーのイクバル・カーン氏はロイターのインタビューで、「米国の富裕層市場は世界最大で、近年かつてない成長を遂げている」と指摘。「米国への投資とビジネス構築は最優先課題だ」と話した。

カーン氏はUBSがクレディ・スイス買収を完了した先月12日、カリフォルニア南部で富裕層顧客と面会し、ウェルスマネジメント事業の重要性を強調。最も優秀なファイナンシャルアドバイザーを集めた社内イベントも開いている。

クレディ・スイスは2015年に米国のプライベートバンキング事業から撤退し、275人のファイナンシャルアドバイザーはウェルズ・ファーゴに移籍した。このため米国においては、クレディ・スイスの買収によってUBSの富裕層向け事業は変化していない。

UBSの超富裕層向けプライベート・ウェルス・アドバイザーの数は過去3年間で25%余り増えた。3月下旬時点で米州のアドバイザーは6147人だが、米国内の人数は不明。

世界的に事業展開する大手銀は、投資銀行やトレーディングのような不安定な事業が業績に与える影響を抑制するため、安定した手数料をもたらすウェルスマネジメント事業への投資を増やしてきた。多くの投資銀は、最も急成長する超富裕層顧客に注力している。

UBSの米州プライベート・ウェルスマネジメント事業を率いるジョン・マシューズ氏は、投資可能資産が3000万ドル超の富裕層は今後5年間で10%増加すると予想。「われわれは、こうした人々へのサービス提供に長けたアドバイザーの獲得と確保に力を注いでいる」と述べた。

昨年発表されたクレディ・スイスのリポートによると、純資産が5000万ドルを超える超富裕層の数は2019年から21年にかけて50%以上増えて26万4200人に達し、その半数以上が米国に居住している。

ウェルスマネジメント事業はUBSの利益の柱だ。モーニングスターのアナリスト、ヨハン・ショルツによるとUBSは4年以内に利益に占めるウェルスマネジメント事業の比率が63%となる見込み。UBSの株価は年初来で6.5%、過去12カ月で17.5%上昇している。

UBSは米事業を強化する上で、今後数年間のベビーブーマー世代から次世代への資産移転に注目。アドバイザーの年齢や人種を多様化し、異なる世代の富裕層を対象としたイベントを開いている。

米国では今後7年間で約18兆ドル、今後20年間では84兆ドルもの資産が若い世代に引き継がれるとUBSは予測している。

カーン氏は「今後20年間で史上最大規模の資産移転が起きるだろう」と予想。「それはわれわれにとって、全く新しい世代の顧客にサービスを提供する大きなチャンスになる」と述べた。

(Tatiana Bautzer記者)

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