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焦点:日銀政策修正、静かに備える円債投資家 長期戦も視野
6月13日、円債投資家は日銀の政策修正に静かに備えている。今月15─16日の政策決定会合を前に、国債(JGB)市場では以前のような投機主導の売り攻勢はみられないが、金利スワップ市場などでは突然の政策修正リスクをカバーする動きが出ている。写真は2022年11月撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
植竹知子
[東京 13日 ロイター] - 円債投資家は日銀の政策修正に静かに備えている。今月15─16日の政策決定会合を前に、国債(JGB)市場では以前のような投機主導の売り攻勢はみられないが、金利スワップ市場などでは突然の政策修正リスクをカバーする動きが出ている。1年以内の政策修正を見込んだ「長期戦」の構えを取る海外勢も健在だ。
<YCCアタックの兆候見えず>
円金利は落ち着いている。13日の市場では、前日の米金利がほぼ横ばいで、日本株が一段高となるリスクオン商状の中、新発10年国債利回り(長期金利)が0.415%と約1週間ぶりの水準に低下した。
昨年9月以降は日銀決定会合が近づくと、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策の修正を見込んで許容上限を試す円債売り、いわゆる「YCCアタック」がみられたが、4月会合終了後は0.5%の上限からは距離のある0.4%台前半での推移が続いている。
ロイターが9日、日銀は15―16日に開く金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きいと報じるなど、政策修正観測の後退はその背景の1つだ。また国債ボラティリティ指数も5カ月ぶり低水準にあり、市場は向こう1カ月間の政策修正を織り込んでいないように見える。
しかし、市場の政策修正観測は消えたわけではない。JPモルガン証券では、日銀が今週の会合で「金利正常化に向けたハト派的なガイダンスを維持しながら、10年国債の許容変動幅を拡大する」(藤田亜矢子チーフエコノミスト)ことをメインシナリオとしている。
金利スワップ市場では、債券売りに相当する払い(固定金利を払う取引)がみられるという。みずほ証券の大森翔央輝・金融市場部チーフ・デスクストラテジストは、先月訪問した欧州投資家の間でも目先の会合での政策修正期待は高くないものの、「確信が持てないとして、スワップの払いで万一の金利上昇に備える投資家が多いようだ」と指摘した。
<「気長に待てる」>
とりわけ海外投資家の間では、今回の会合では現状維持だとしても、日銀がいずれ政策修正に動くとの見方は根強い。
英運用会社RBCブルーベイ・アセットマネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は、YCCは既に役目を終えたとの見方から「JGB売り(ショート)」のポジションで今週の日銀会合を迎える構えだ。12月のサプライズ修正を受けて一部ポジションの利益を確定済みで、先物ショート自体は特段の維持コストがかからない戦略であるため、向こう1年以内のYCC修正を確信しているが、今週を含め早期修正が無くても気長に待てる、と余裕を見せる。
米大手運用会社の債券ディレクターは、昨年からのJGBアンダーウェイト(弱気)のスタンスを今年4月に一旦解除したが、その後5─6月に再びアンダーウェイトにしたと明かす。展望リポートが公表される7月か10月に変動レンジを拡大するYCC修正を本命視しており、今週の会合での可能性は低いと予想しているが、「修正は12月同様、いきなり行われる」との見方から、仮に修正があっても対応可能なスタンスで備えている。
モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一・債券戦略部エグゼクティブディレクターは、海外勢のうち「ファストマネー」と呼ばれる投機的な短期投資家はここまでのアタック不成功で戦意喪失しており4月末でポジションが一掃された一方、「リアルマネー」と呼ばれる長期投資家はまだある程度ショートを維持していると指摘する。
もっとも、こうしたショート勢が日銀の政策変更時の金利急上昇を防いでくれるかもしれない。前出の米運用会社の債券ディレクターは、今回の日銀会合でYCC修正があった場合でも「0.9%超えでは利食いに動く投資家が多く、長期金利は1%に届かないのではないか」と予想している。
(植竹知子 編集:伊賀大記)