ニュース速報

ビジネス

トヨタ約14年ぶり社長交代、豊田氏は会長に 佐藤氏昇格で変革加速

2023年01月26日(木)19時48分

 1月26日 トヨタ自動車は26日、佐藤恒治執行役員(写真)が社長に昇格し、豊田章男社長が会長に就任する人事を内定したと発表した。13日、千葉市の幕張メッセで撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoo)

[東京 26日 ロイター] - トヨタ自動車は26日、佐藤恒治執行役員(53)が4月1日付で社長に昇格し、豊田章男社長(66)が代表権のある会長に就任する人事を発表した。およそ14年ぶりの社長交代。若返りを図り、自動車の電動化、IT化時代に必要な変革を加速する。

自社のインターネット番組に出演した豊田氏は、佐藤氏を後任に選んだ理由として「トヨタの思想・技・所作の体現者」であること、若さと車好きという点を挙げた。モビリティ―カンパニーへの変革に向けて「これまでは個人技で引っ張ってきたところがある」と振り返り、「私はもう古い人間だと思う」とも述べた。

その上で「未来のモビリティーはどうあるべきか」という新しい章に入るには「私自身が一歩引くことではないか」と話した。持続的な成長に向けて適材適所のメンバーが力を合わせてやっていくことに賭けたいとし、若さと行動力のある「新チームに期待したい」と述べた。新チームの使命は「トヨタをモビリティカンパニーにフルモデルチェンジすること」といい、「私にはできないことも新チームならできると思う」と語った。

豊田氏は世界金融危機でトヨタが赤字に転落した直後の2009年6月、14年ぶりに創業家出身者として社長に就任。翌10年には米国で大量のリコール問題、11年には東日本大震災が発生して難しいかじ取りを迫られたが、22年3月期には6年ぶりに営業最高益を更新した。

独フォルクスワーゲン(VW)と世界販売台数の首位を争う一方で、海外の主要市場で電気自動車(EV)が急速に普及し、EV専業の米テスラや中国メーカーなどと比べて出遅れ感も指摘されてきた。豊田社長は「私自身はどこまで行っても車屋。車屋だからこそトヨタの変革を進めることができた。しかし車屋を超えられない。それが私の限界でもある」と語った。

豊田氏は会長として今後、社内では佐藤次期社長の新体制を支えるほか、取締役会議長を務める。トヨタ車、高級車ブランドのレクサス車の乗り味を吟味するマスタードライバーも続ける。社外では世界の自動車産業が抱える問題の解消に取り組み、産業の発展にも尽力する。

佐藤氏は1992年3月に早稲田大学理工学部機械工学科卒業、同年4月にトヨタ入社。現在、チーフ・ブランディング・オフィサーのほか、レクサス・インターナショナルとガズー・レーシング・カンパニーのプレジデントを務めている。番組に共演した佐藤氏は「すべての人が自由に移動できるモビリティー」を生み出すことが新体制の課題であり、「車の本質的な価値を守り、新しいモビリティーの形を提案したい」と述べた。

ハイブリッド車「プリウス」などの開発を主導した内山田竹志会長(76)は退任する。豊田社長は社長交代を決めた引き金が内山田会長の退任表明だったことを明らかにした上で、「トヨタの変革をさらに進めるためには私が会長となり、新社長をサポートする形が一番良いと考えた」と語った。

auカブコム証券の山田勉マーケットアナリストは「サプライズだった。本当に若く大抜擢だ」と指摘し、豊田社長だからこそできた大英断と評価した。豊田氏が代表権のある会長として新体制を支えることから「すべての戦略が一気にシフトするようなことはないと思う」としつつ、これまでEVの出遅れなどがあったため、今後は意思決定が早くなる可能性もあるとの見方を示した。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中