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アングル:中国株に海外大手行がそろり回帰、依然残る規制・政治リスク

2022年12月05日(月)16時51分

 中国株式市場は経済再開を巡る期待と不安で乱高下しているが、海外の大手金融機関は従来の様子見姿勢から一歩踏み出し、慎重ながらも強気の見通しを示し始めている。写真は2020年1月、北京の証券会社で撮影(2022年 ロイター/Jason Lee)

[香港 5日 ロイター] - 中国株式市場は経済再開を巡る期待と不安で乱高下しているが、海外の大手金融機関は従来の様子見姿勢から一歩踏み出し、慎重ながらも強気の見通しを示し始めている。

シティ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガンは、投資判断を引き上げ、割安感のある消費関連株が経済再開で値上がりする可能性があると指摘。

ゴールドマン・サックスは、MSCI中国指数とCSI300指数の来年のリターンが16%になると予測し、中国市場への資金配分をオーバーウエートとすることを推奨した。

JPモルガンは、来年のMSCI中国指数に潜在的に10%の上昇余地があると分析。

モルガン・スタンレーは5日、経済再開の見通しが改善したとして投資判断をオーバーウエートに引き上げ、消費関連株へのエクスポージャーを増やした。

バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズは11月に強気に転じ、インターネット関連株と金融株が短期的な反発を主導すると予想している。

<規制・政治リスクがネックに>

ただ、景気の回復予想でコンセンサスが成立しつつあるものの、全体としては、投資のタイミングや中国市場に配分する資本のウエートについては判断を先送りする姿勢が見受けられる。ここ数年、株式市場に付きまとっている規制・政治リスクが残っているためだ。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの大中華圏株式担当ヘッド、エバ・リー氏は「最初の10%の上昇は逃してもかまわない。政策転換の兆しが鮮明になるまで待ちたい」とし「今年は(新型コロナ感染対策と不動産政策で)前進と後退を何度も繰り返した」と述べた。同社は中国株の投資配分をマーケットニュートラルとすることを推奨している。

早期の回復局面が始まった兆しは出ている。ハンセン指数は先週6%上昇、11月は27%値上がりし1998年以来の大幅高となった。先週の人民元は2005年以来の大幅な上昇を記録している。

市場参加者によると、これまでの値動きを見ると、新型コロナ流行などを背景に投資家のポジションは軽く、資金フローの厚みが持続的に増せば市場が押し上げられる可能性がある。

米国の機関投資家は第4・四半期に入っても、中国企業の米預託証券(ADR)の保有を減らしており、推定で29億ドルの資金流出となっている。

モルガン・スタンレーの先月29日時点のデータによると、ADRの空売り残は先月11%増加。ソシエテ・ジェネラルは中国への推奨資産配分をオーバーウエートからニュートラルに引き下げた。

<押し目で買い増し>

今年の中国市場は、国内企業の米上場廃止リスク、不動産部門の信用危機、新型コロナ感染対策による景気減速といった悪材料に相次いで見舞われた。

CSI300指数は今年に入り22%、ハンセン指数も20%下落。世界の株式市場の下落率16%を上回る下げを記録している。

金融緩和、度重なる不動産支援策、厳格な新型コロナ感染対策の一部緩和といった政策対応が取られているが、投資家の信認を完全に得たとは言い難い。規制や政治の先行きが予測できないことが、依然として企業利益の重しとなっており、国内の信頼感も引き続き脆弱だ。

BNPパリバ・アセット・マネジメントのシニアストラテジスト、チ・ロー氏は「金融緩和の効果がなくなっている」とし、政策が追い風となりそうなセクターを引き続き選好すると発言。「中国の長期成長目標に合致する3大テーマを今なお重視している。技術・イノベーション、消費のグレードアップ、業界の統合だ」と述べた。

ゴールドマン・サックスは、テクノロジーハードウェアや黒字の国有企業といったセクターに政策を踏まえて投資することを推奨している。

市場関係者は乗り遅れのリスクも考慮している。

MSCI中国指数は今年27%下落しており、株価収益率(PER)は9.55倍と、10年平均の11.29倍を下回っている。

DWSのアジア太平洋担当最高投資責任者、ショーン・テイラー氏は「ヘッジファンドの多くは中国を本格的にアンダーウエートやショートにしていたが、これはリスクが高くなりつつある」とし「当社の見解は、経済再開で恩恵を受ける銘柄、特に消費関連株を押し目で買い増すというものだ」と述べた。

DWSは来年の中国株に15─20%の上昇余地があるとみている。

ロイター
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