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衆院本会議で代表質問、岸田首相「国民生活と事業活動守り抜く」

2022年10月05日(水)16時44分

 10月5日、岸田文雄首相(写真)は衆院本会議で、金融政策や為替の円安に関する考え方を問われ、金融緩和策の出口戦略を含めて「具体的な手法は日銀に委ねられるべき」だ述べた。写真は都内で3日撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

[東京 5日 ロイター] - 衆議院は5日に本会議を開き、3日の岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問を行った。岸田首相は日本経済について、コロナ禍から緩やかに持ち直しているものの、エネルギー・食料価格の高騰や世界の景気後退懸念が大きなリスク要因になっていると指摘。10月中に総合経済対策をとりまとめ、国民の生活と事業活動を守り抜く決意を示した。

首相は、物価高対策の一環として、電気料金の負担増を直接的に緩和する「前例のない思い切った対策を講じる」と強調。エネルギー、食料品についても危機に強い経済構造への転換を図ると語った。さらにインバウンド観光の復活など円安のメリットを最大限引き出すとともに、企業の国内回帰や農林水産物の輸出拡大なども進めるとした。

金融政策や為替の円安に関する考え方については、金融緩和策の出口戦略を含めて「具体的な手法は日銀に委ねられるべき」だと述べた。為替の見通しにはコメントを控えるとしつつ、足元の円安環境を生かして「インバウンドの回復や企業の国内回帰などにより経済の活性化につなげることが重要だ」語った。

エネルギー政策における原子力発電所への取り組みについては「いかなる事情よりも安全性が最優先であり、独立性の高い原子力規制委員会が厳格に規制を行っていく方針に変わりはない」と語った。日本に対する武力攻撃が発生するという事態は「原発の規制の問題ではなく、日本自身の防衛の問題だ」とした。

首相は、原発の再稼働によって電力需給ひっ迫が緩和されるとともに電力価格上昇が抑制される、と説明。許可済みの7基について、来年以降できるだけ早期に再稼働を目指すと語った。

<旧統一教会との関係、山際大臣は「自らの責任で丁寧に説明を」>

山際大志郎経済再生相が自民党で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を点検した後に新たな接点が報じられていることについては、これまでの説明で理解を得られていないなら、「引き続き政治家として自らの責任において丁寧に説明をする必要がある」と語った。

首相は、旧統一教会について「社会的に問題が指摘されている団体だと認識している」と述べた。関係法令を確認しながら厳正に対応していくが、信教の自由を保証する観点から「宗教法人の法人格を剥奪するという極めて重い対応である解散命令の請求については、判例も踏まえて慎重に判断する必要がある」と述べた。

<防衛力強化へ、あらゆる選択肢排除せず検討>

北朝鮮が今年に入って弾道ミサイルの発射を繰り返していることは、日本にとって差し迫った脅威であり、地域と国際社会全体の平和と安全を脅かす「深刻な挑戦だ」とし、政府として情報収集・分析の徹底と警戒監視に万全を期すと語った。

今年末までに策定する新たな国家安全保障戦略等の検討過程で「いわゆる反撃能力を含めあらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速し、防衛力を抜本的に強化していく」と述べた。必要となる防衛力の内容、予算規模、財源の検討を一体的に進めていくとともに、国民に丁寧に説明して理解を得ていく考えを示した。

自身の公設秘書を務めていた長男の翔太郎氏を政務担当の秘書官に起用したことについては、政権発足1年を機に「適材適所の観点から総合的に判断した」と説明した。

岸田首相は、立憲民主党の泉健太代表、自民党の上川陽子幹事長代理、立民の西村智奈美代表代行の順番で、それぞれ質問に答えた。

衆議院は本会議の冒頭、北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する抗議案を全会一致で決議した。北朝鮮の一連の行動は関連する国連安保理決議の違反であり、断じて容認できないと強調。「厳重に抗議し、最も強い表現で非難する」とした。

(杉山健太郎、平田紀之)

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