ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-ロシア国営ガスプロム、欧州向けガス供給で「不可抗力」宣言

2022年07月19日(火)09時19分

ロシア国営ガスプロムが欧州の顧客に対し、「異常な」状況下にあるため、ガス供給を保証することができないと伝えた。6月17日撮影(2022年 ロイター/Anton Vaganov)

[ロンドン 18日 ロイター] - ロシア国営ガスプロムが欧州の顧客に対し、「異例の」状況下にあるためガス供給を保証することができないと伝えた。ロイターが書簡を入手した。

14日付の書簡によると、ガスプロムは6月14日以降のガス供給について遡って「不可抗力」を宣言しているという。

ガスプロムからのコメントは得られていない。

ドイツ最大のガス輸入業者であるウニパーはガスプロムからの書簡を受け取ったと表明。ガスプロムの要求は不当であり、正式に拒否したと発表した。

ドイツの電力最大手RWEも書簡を受け取ったと明かしたが、「詳細や法的見解についてはコメントできない」とした。

関係者によると、ガスプロムが不可抗力としているのは、ドイツなどへの主要供給ルートであるガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた供給に関するものという。

ノルドストリーム1を通じた供給は、定期保守点検のため今月11日から完全に停止している。停止期間は10日間だが、ロシアのウクライナ侵攻で緊張状態が続く中、欧州の各国政府や市場、企業は停止期間が延長される可能性を懸念している。

ABNアムロのシニアエネルギーエコノミスト、ハンス・バン・クリーフ氏は、ガスプロムからの書簡は「ノルドストリーム1経由のガス供給が10日間のメンテナンス終了後に再開されない可能性を示唆している」と指摘。ロシアと欧州およびドイツ間の緊張が激化するかもしれないとした。

一方、オーストリアのエネルギーグループであるOMVは18日、ノルドストリーム1経由のロシア産ガス供給は停止後に予定通り再開される見込みと発表した。

ガスプロムは不可抗力の開始日としている6月14日に、ノルドストリーム1のガス供給量を40%に削減。カナダで修理中のタービンの返却が遅れていることが理由としていた。

ロシア紙によると、カナダは修繕作業を終えたタービンを7月17日に航空機でドイツに輸送した。

米ホワイトハウスのジャンピエール報道官は「ロシアは天然ガスを政治的、経済的な武器として利用し続けている」とし、ロシアの化石燃料に対する欧州の依存削減に向けて、バイデン政権は引き続き取り組んでいると述べた。

また「ロシアの抑圧がエネルギー市場に圧力を加え、消費者の価格を引き上げているほか、世界のエネルギー安全保障を脅かしている」と非難した。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏独首脳、ウクライナにロシア領内攻撃容認を 一部施

ワールド

チェコ主導のウクライナ砲弾供給計画、16億ユーロ調

ワールド

北朝鮮の金総書記、軍事偵察能力の保有断念せずと表明

ビジネス

米証券決済「T+1」が始動、一時的なフェイル増加な
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中