ニュース速報

ビジネス

東証が全銘柄の取引を終日停止、社長「責任痛感」 2日は再開 

2020年10月01日(木)20時18分

 東京証券取引所で1日、システム障害が発生し、全銘柄が終日売買停止となった。システム障害による全銘柄の取引停止は2005年11月以来。終日売買停止は、全面的に電子システムでの取引が行われるようになった1999年5月以降で初めてとなる。写真は東証内の株価ボード。(2020年 ロイター/ISSEI KATO)

[東京 1日 ロイター] - 東京証券取引所は1日夜、終日停止した株式の売買を2日から通常通り再開すると発表した。システム障害による全銘柄の取引停止は2005年11月以来。売買を終日停止したのは、全面的に電子システムでの取引が行われるようになった1999年5月以降で初めてとなる。東証の宮原幸一郎社長は記者会見で「責任を痛感している」と謝罪した。

<ハードの故障が原因、大証は稼働>

東証によると、原因は株式取引システムの「アローヘッド」を構成する機器の故障で、不正アクセスの可能性はないとしている。東証はハードの障害が起こった機器からバックアップへの切り替わりが正常に行われなかったことによって相場情報が配信できなくなったと説明。本日中に故障した機器を交換し、取引システムが正常に稼働していることを確認をしたうえで、2日に市場を再開する。

障害の原因については、基幹システムを開発した富士通6702.Tと共同で調査を行っている。故障した機器の特定はされているが、システム障害の根本原因は究明中。宮原社長は、富士通はあくまでも機器のベンダーであり「市場運営者としての責任は全面的にわれわれにある」と述べ、現時点で富士通に損賠賠償を行わない考えを示した。

同じシステムを使う札幌、名古屋、福岡の各証券取引所も全銘柄の売買を終日停止した。一方、先物取引が中心の大阪取引所は稼働しており、日経平均先物12月限は前日比130円高の2万3310円で取引を終えた。

<対応に追われる証券会社、立会内の売買停止までの注文は引き継がれず>

市場では「先物が動いているので市場参加者は比較的冷静のようだ。日経平均先物は米株先物に連動して上昇している。売買が再開しても大きく売られることはないのではないか」(みずほ証券の調査部シニアテクニカルアナリスト、三浦豊氏)との声が出ていた。

一方、各証券会社は対応に追われた。野村証券は午前の段階で、注文は受け付けているが、「取引所の今後の発表によっては売買が成立しない可能性がある旨を説明した上で、受注している」としていた。

東証は午後、「立会内市場では全銘柄について約定は成立しておらず、売買停止までの間に受け付けた注文はすべて明日以降の売買に引き継がれない」と発表。1日に受け付けた注文はすべてキャンセルとなり、取引再開後に改めて受け付ける。ToSTNeT市場では、午前8時56分までに受け付けた注文は約定が成立しているという。

宮原社長は「まずは徹底した原因究明を行ったうえで再発防止に万全を期す。同時に今回の取引が投資家や参加者に影響を及ぼしたのか調査する」と述べ、証券会社や投資家に何らかの損失が出た場合の補償については明言を避けた。

2日の取引では、個別銘柄の基準値は30日の終値を用いる。制限値幅などにも特別な措置はとらない。

<金融庁が対応求める>

金融庁は、東証に原因究明と復旧に向けた対応を求めた。加藤勝信官房長官は午前の会見で、金融庁が原因究明と対応を指示しているとした上で、「取引所は経済の重要インフラであり、株式取引ができなくなっている現状は遺憾だ」と話した。

関係筋によると、金融庁は東証に対し、近く金融商品取引法に基づく報告命令を出す方針。

時事通信によると、氷見野良三金融庁長官が午後、官邸に入り、状況を説明したとみられている。

<ひろぎんHDはテクニカル上場>

この日上場したひろぎんホールディングス7337.Tは「状況を見守ることしかできない。復旧を待ちたい」(広報担当者)とコメントした。東証の規定では「テクニカル上場」となる。

*内容を追加しました。

(伊賀大記、久保信博、石田仁志 取材協力:竹本能文、杉山健太郎、浜田寛子、山崎牧子、梅川崇 編集:青山敦子、田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、凍結資産巡りEU批判 「主要産油国の外

ビジネス

金利を変更する理由ない、政策は当面安定推移=スペイ

ワールド

仏上下両院合同委、予算妥協案で合意できず 緊急立法

ワールド

プーチン氏、「ウクライナ和平条件変わらず」 年末会
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中