ニュース速報

ビジネス

アングル:外出自粛で「巣ごもり特需」、供給ひっ迫で頭打ちも

2020年04月07日(火)22時26分

新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済は落ち込みが避けられそうにないが、任天堂のゲーム機の販売が大きく伸びるなど、「巣ごもり特需」とみられる現象も起きている。写真は任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の売り場。2017年3月、東京で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

平田紀之

[東京 7日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済は落ち込みが避けられそうにないが、任天堂のゲーム機の販売が大きく伸びるなど、「巣ごもり特需」とみられる現象も起きている。ただ、感染症の広がりで影響を受けた生産が全面回復せず、今の勢いが続くかどうかは不透明だ。

ゲーム誌「ファミ通」が7日に発表した3月の国内家庭用ゲームソフト・ハードの売り上げデータによると、任天堂の主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の販売台数は83万台超だった。昨年の年末商戦の約113万台に次ぐ規模で、前年同月からは実に2.8倍となった。

「ファミ通ゲーム白書」の上床光信編集長は「巣ごもり需要の側面もあるだろう」と分析する。

3月分の集計期間は2月24日─3月29日の5週間。この間は、東京都などの休日の外出自粛要請や、企業によるテレワーク、児童・学生の自宅学習の動きが広がった。

すでにモデル終盤に差し掛かっているソニーのゲーム機「プレイステーション4」も、1月の週当たり販売台数6000─7000台程度に比べ、3月はほぼ倍増した。

スイッチの場合、3月に発売された人気シリーズ「あつまれ どうぶつの森」の最新作が、10日間で約260万8000本を売る大ヒットとなったことも、ハードの売り上げを押し上げた可能性がある。

そしてそのどうぶつの森自体が、巣ごもり需要の恩恵を受けた節がある。過去のシリーズは発売1週目の販売が50─70万本。それが今回は180万本超と大きく伸長した。

<デジカメや双眼鏡は対照的>

巣ごもり需要の兆候は、ゲーム以外にも見られる。調査会社BCN総研によると、テレビに接続してインターネット動画を視聴できるようにする米グーグルの「クロームキャスト」の販売は、2月半ばから前年同週比で伸び、3月最終週には同4倍弱となった。

一方、卒業式や入学式でのニーズが見込まれるデジカメや家庭用ビデオカメラは半減している。コンサートやスポーツ観戦で使う双眼鏡、海外旅行へ持っていく人が増えている音声翻訳機は6─7割減となり、対象的だ。

ニンテンドースイッチは発売から3年を経て再び販売が急拡大した格好で、ゲーム業界関係者に言わせると「異例の事態」だという。エース証券経済研究所の安田秀樹シニアアナリストは、「今買っているのはもともとゲームをしていた人ではなく、本来ゲームをしていなかった人たちだろう。新規ユーザーが掘り起こされているのではないか」と分析する。

<中国生産の一時停止が影響か>

しかし、こうした「巣ごもり市場」の勢いがどれほど続くかはわからない。米アップルのiPadのようなタブレット端末は3月にかけて堅調に推移したが、足元では失速気味だ。

BCN総研の木下智裕部長は「在庫が不足してきたためではないか」と指摘する。家電量販店関係者は「テレワークや自宅学習が広がり、在庫が足りない。次の入荷時期も見えにくい」と話す。

実際、任天堂はこのほど、主力機のスイッチと携帯用のライトの国内出荷を一時停止した。予約分を除いて今週は出荷せず、来週以降については改めて発表するとしている。

任天堂は理由を明らかにしていないが、スイッチの生産を委託している中国の工場は2月、現地での新型コロナ感染拡大を受けて生産が一時的に滞った。生産は再開しているものの、事情に詳しい関係者によると、「まだフル稼働とはいえない」という。

任天堂は昨年からベトナムでも生産しているが、依然として中国での生産比率は高い。エース経済研の安田氏は、「残念ながら4月はそれほど供給できないのではないか」と指摘する。

任天堂の広報担当者はロイターの取材に対し、回答を控えた。

(編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

冷戦時代の余剰プルトニウムを原発燃料に、トランプ米

ワールド

再送-北朝鮮、韓国が軍事境界線付近で警告射撃を行っ

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB価格を7130円に再引き

ワールド

インテル、米政府による10%株式取得に合意=トラン
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で見つかった...あるイギリス人がたどった「数奇な運命」
  • 4
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 10
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中