ニュース速報

ビジネス

EU首脳、21-27年の予算討議 加盟国間の亀裂鮮明

2020年02月21日(金)09時32分

欧州連合(EU)は20日にブリュッセルで開幕した首脳会議で2021─27年のEU予算を巡る協議を開始した。代表撮影(2020年 ロイター)

[ブリュッセル 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)は20日にブリュッセルで開幕した首脳会議で、2021─27年のEU予算を巡る協議を開始した。英国の離脱で予算規模が750億ユーロ(810億ドル)減少すると見込まれる中、気候変動や移民などの問題への対応も迫られており、2日間の日程で開かれる今回の首脳会議開始前から加盟国の間で見解の相違が顕著となっていた。

首脳会議に先立ちミシェルEU大統領は、21─27年の予算を域内国民総所得(GNI)の1.074%に当たる約1兆0900億ユーロとすることを14日に提案。これが首脳会議での討議のたたき台となっている。[nL4N2AE3YM]

ただ、オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマークは同比率を1.00%にとどめるよう主張。EU予算に最も大きく貢献しているドイツはこれより高い水準を容認する姿勢を示しているが、1.07%は高過ぎるとしている。

このほか、EUの執行機関である欧州委員会は1.1%、欧州議会は1.3%と意見の相違は幅広い。

長期的な予算を巡る意見の隔たりは、EU加盟国間に存在する南北、東西、あるいは経済規模による亀裂を露呈している。

外交筋は、2日間の首脳会議で意見の隔たりが埋まる可能性は低いとの見解を示した。

1日目には出席した首脳が1人ずつこれまでに示した立場を改めて主張し、その後、議長役のミシェル大統領が夜にかけて各国首脳と個別に会談し、新たなたたき台を模索した。

ドイツのメルケル首相は会議開始にあたり記者団に対し「有意な進展が得られることを望む。複雑な問題だ。克服しなくてはならない見解の大きな相違が存在している」と述べた。

フランスのマクロン大統領は「英国の離脱による影響を他国の削減努力で補完することは容認できない」とし、「野心的な合意に至るには時間がかかる。数日かかる可能性もある」と語った。

英国の離脱による予算不足を埋めるため、欧州委員会は、特定の加盟国の拠出金を減免する「リベート」と呼ばれる慣行の廃止を提案している。しかし、リベートの恩恵を享受している国は、廃止は受けられないとの立場だ。

EUは新たな財源も模索しているが、プラスチックごみへの課税や温暖化ガスの排出権取引から得られる利益の活用などについても首脳らの意見は対立している。

当局者らは、年末までに合意が得られなければ、2021年以降のEUのプロジェクトの大部分が凍結される恐れがあると指摘している。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中