ニュース速報

ビジネス

イタリア経済は予想より低調、欧州委が見通し コンテ首相は反論

2018年11月09日(金)02時49分

 11月8日、EU執行機関である欧州委員会は、イタリアの経済成長が向こう2年間は同国政府の予想より緩慢になるとの見方を示した。ローマで10月撮影(2018年 ロイター/ALESSANDRO BIANCHI)

[ブリュッセル/ローマ 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は8日、イタリアの経済成長が向こう2年間は同国政府の予想より緩慢になるとし、財政赤字は政府予想より拡大するとともに、公的債務は縮小はせず横ばいで推移するとの見方を示した。

欧州委が示した予想を受け、イタリア10年債利回りは3.385%から3.413%に上昇した。

ユーロ圏財務相は5日の会合で、イタリアの2019年予算案がEU財政規律に違反しているとの見解を表明しており、欧州委が示した予想はこうした見方を裏付けるものとなる。イタリアが期日の13日までに改正予算案を提出しない場合、欧州委は月内に是正に向けた措置の策定に着手するが、今回示した見通しはその論拠となる可能性がある。

イタリアのコンテ首相は、欧州委の見通しは構造改革などの効果を過小評価していると指摘。声明で「イタリアの改革の健全性と持続可能性に疑問を呈する論拠はない。このため、イタリアの公的財政を巡る他のいかなるシナリオも信頼できないものと考える」とした。

イタリアのトリア経済・財務相も欧州委の見通しは正しくないと反論。声明で「欧州委のイタリアの赤字に関する見通しは(予算案の)不完全な分析に基づいており、イタリア政府の見通しと大きく異なる」とした。ただ政府は欧州委と建設的な協議を継続するとの立場を示した。

欧州委のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は9日にローマを訪問し、協議を継続する意向を表明。ただ「規則は尊重する必要がある」とし、いかなる妥協も行わないとの立場を示した。

欧州委はEU加盟28カ国の定例の経済見通しの中で、イタリアの国内総生産(GDP)の今年の伸びは1.1%になると予想。イタリア政府が予算案で示した1.2%を下回った。

欧州委は19年は1.2%、20年は1.3%と予想。ともにイタリア政府の見通しの1.5%と1.6%を下回った。

国際通貨基金(IMF)はイタリアについて一段と厳しい見方を表明。成長率は19年が1.0%、20年は0.9%になるとの見通しを示し、経済成長が潜在力を上回っている限り、イタリアは財政赤字と公的債務の削減を優先する必要があるとの見解を示した。

経済成長が低迷することで、財政赤字の対GDP比率は今年1.9%と、イタリア政府の予想の1.8%を上回ることになる。19年は財政支出の拡大と減税などで同比率は2.9%と、政府予想の2.4%を上回る見通し。20年についてはイタリア政府は2.1%に低下するとの見通しを示しているが、3.1%に上昇するとの予想を示した。

EUは加盟国に財政赤字をGDPの3%以下に抑えるよう求めている。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中