ニュース速報

ビジネス

焦点:イタリア債務問題、ユーロ圏に伝播しない理由

2018年10月21日(日)07時31分

 10月18日、今年に入ってからは、イタリア国債の動揺が他のユーロ圏諸国に波及しない構図となっている印象が強い。ローマで5月撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)

[ロンドン 18日 ロイター] - 今年に入ってからは、イタリア国債の動揺が他のユーロ圏諸国に波及しない構図となっている印象が強い。イタリアとスペイン、ポルトガルをひとまとめに扱う投資家の習性が消えつつあるからだ。

これら南欧諸国のどこか1国にトラブルが起きるたびに、混乱の伝播(コンテージョン)を抑える努力をしてきた欧州中央銀行(ECB)の成果であるようにも見えるが、足元でくすぶるイタリアの来年の予算案を巡る問題も、今のところ市場では国内問題だと受け止められている。

2010─12年のユーロ圏危機を経てから何年もの間、イタリアとスペイン、ポルトガルは「周縁国」というくくりで、国債価格は連動してきた。危機の再発のリスクを生むどんな材料が出てきても、比較的信用力の弱いこの3カ国の国債は同じように売りを浴びた。

ところがECBのドラギ総裁がユーロ圏を救うためには「できることは何でもやる」と表明して6年が経過したところでようやく、3カ国の国債価格の連動性が崩れようとしている。

イタリアの財政赤字に関しての大騒ぎや、同国政府と欧州連合(EU)が真っ向から衝突するリスクは、ポルトガルやスペインの国債にほとんど影響を及ぼしていない。このためイタリア国債のスペイン国債に対する利回りのプレミアムは過去20年で最大になった。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのグローバル・ストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「周縁国(国債)の相関度は過去最低目前にあり、ここしばらくの期間で初めて、ユーロ圏国債市場のある出来事が、ユーロ圏の枠組み自体の脅威とみなされていないことが非常に鮮明になっている」と述べた。

その理由の1つは、財政懸念が今のところイタリアに限定されていることだ。以前ならどこかの国が抱える固有のリスクでも、南欧国債全般に広がっていた。昨年のスペインのカタルーニャ自治州独立問題などがその例だった。

ただ今回は、イタリアの債務問題が同国のユーロ加盟の是非には影響しないとの市場の確信がより強い。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な同国の連立政権も、ユーロ圏離脱には関心がないと懸命に強調してきた。

BNPパリバ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アルノー・ギョーム・ラミー氏は、ユーロ圏の将来が危うくならない限り、コンテージョンは再燃しないとの見方を示した。

JPモルガン・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、イアン・ステーリー氏は、自身が運用に携わるファンドがこのところのイタリアの混乱局面を通じて、スペイン国債を買ったことを明らかにした。

同氏はロイターに「あなたがファンドマネジャーで、イタリア国債を保有したくないなら、スペインとポルトガルが唯一の現実的な代替投資先になる」と語り、特にスペインは近年欧州の成長頭で、大量の失業者を抱えて銀行システムへの懸念が強かった12年ごろとは様相が一変していると付け加えた。

スペインは16年と17年の成長率がユーロ圏のトップだった。またポルトガルも少し前までは大手3社の格付けがそろって投機的水準だったのに、先週のムーディーズの格上げで完全に投資適格級に戻った。昨年の成長率は2.7%で、やはりユーロ圏全般をアウトパフォームしている。

BBVAの金利トレーディング・ストラテジスト、Jaime Costero Denche氏は、スペインとポルトガルの国債の投資家の顔ぶれも変わってきたと指摘。北欧や中東、アジアなど以前には周縁国の国債を買わなかった投資家が姿を見せていると話した。

コンテージョンが起きない大きな理由としては、スペインとポルトガルの銀行が当局の不良債権への取り組みのおかげで、経営状況が改善した点も挙げられる。一方イタリアは不良債権への対応が始まったばかりだ。

(Abhinav Ramnarayan、Ritvik Carvalho記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン高官が核協議、アラグチ外相「継続で合意」

ワールド

中国が秘密裏に核実験、米国が非難 新たな軍備管理合

ビジネス

ユーロ高、政治的意図でドルが弱いため=オーストリア

ビジネス

英シェル、カザフ新規投資を一時停止へ 政府との係争
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南山」、そして「ヘル・コリア」ツアーへ
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中