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焦点:市場揺らす無機質な負の連鎖、「玉突き」的にマネー収縮
2月9日、世界的な金融市場の動揺が収まらない。NY証券取引所で8日撮影(2018年 ロイター/Brendan Mcdermid)
[東京 9日 ロイター] - 世界的な金融市場の動揺が収まらない。表面上は好調な米景気を背景とする金融引き締め懸念が主因とされるが、水面下で起こっているのは長期にわたる金融緩和で膨張したマネーの急激な巻き戻し。玉突き的に様々な市場が激しい売りに襲われる「無機質な負の連鎖」ともいえる現象だ。波乱含みの展開が、早期に収束する気配は今のところない。
<2度目の1000ドル安、CTAが主導か>
8日の米ダウ<.DJI>は前日比1032ドルの大幅下落となり、今月5日に次ぐ過去2番目の下げ幅を記録した。市場では、今回の下げを主導したのはCTA(商品投資顧問業者)との見方が出ている。
ポイントはダウではなくS&P500<.SPX>だ。連日の急落で2日以降8%以上の下落となり、2600ポイントを約2カ月半ぶりに割り込んだ。心理的な節目であるだけでなく、CTAの現在の「損益分岐点」とみられている水準にあたる。
「CTAは昨年9月以降、レバレッジをかけてS&P500先物のロングを積み上げてきた。その平均エントリーコストは約2600ポイントと推計されるため、ロスカットのロング圧縮が加速したのではないか」と野村証券のクオンツ・ストラテジスト、高田将成氏は指摘する。
CTAは、コモディティ(商品)だけでなく、株式や金利の先物を投資対象にし、インカムゲインやキャピタルゲインではなく、価格の上下動から収益を得る戦略を採る。数十年前はテクニカル主体の売買だったが、最近は複雑なアルゴリズムを使っているとされ、重要なポイントが平均エントリーコストだとみられている。
<ファンダメンタルズに大きな変化なし>
今回の米株急落はファンダメンタルズの変化よりも、こうした「無機質な変化」によってもたらされたとの指摘が市場で多い。
8日の株安のきっかけになったといわれるのは、10年米国債利回り
8日の国債金利が上昇した理由とされたのは、1)米上院指導部がまとめた予算方針で歳出が大幅に増加した、2)30年国債入札で応札倍率が昨年11月以来の低水準となるなど不調だった──ことだ。
しかし、米財政規律の緩みは、先に成立した大規模な税制改正と合わせ、すでに市場で中長期的観点から問題視されていた。入札も7日の10年国債も不調だったが、米国債の信認が問われるような不人気ぶりだったわけでもない。
先の2日の米株市場でダウが665ドル安になったきっかけも、1月米雇用統計で時間当たり賃金が8年7カ月ぶりの大幅な伸びとなったこととされた。しかし、専門家の間では、大寒波の影響で平均労働時間が減少、それが労働供給のボトルネックとなって平均時給を一時的に押上げた面が大きいとの分析がもっぱらだ。
<ボラティリティ上昇とデレバレッジの連鎖>
ボラティリティーの上昇も、2つのルートを通じて、今回の無機質な負の連鎖を加速させたとみられている。
1つはボラティリティーを対象とする投資商品からの売りだ。シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出し、別名「恐怖指数」と呼ばれるボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>が上昇。VIXに連動し、米国株が急変動しないことに賭ける上場投資商品(ETP)のレバレッジ解消が加速した。
バークレイズは6日付のレポートで、ボラティリティー関連ファンドのレバレッジ解消で2250億ドル相当の株売りが出ると試算していた。
もう1つのルートは、昨年レバレッジをかけて米株先物ロングを積み上げてきたリスク・パリティ・ファンドなどによるレバレッジ解消だ。リスク・パリティ・ファンドの運用資産は約7000億ドル(約76兆円)前後との試算が出ている。
これらのファンドがレバレッジを解消する中で、米株は大きく下落。重要なテクニカルポイントを割り込んできたことで、CTAなどのロングポジション解消がさらに株安を加速させる構図になっている。
「各参加者が自分を守るために執行した小さな売買が、結果として大きなうねりになっている。こうなるとリスクの低減が至上命題となるため、(米株や米債の買いなど)持ち高がかさんでいる商品の売り戻しが続くだろう」(外銀幹部)。市場の動揺はしばらく収まりそうにないかもしれない。
(基太村真司 編集:伊賀大記)





