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展望2018:株高予想が優勢、年末に日経2万7000円の見方も

2017年12月24日(日)17時11分

 12月22日、2018年の日本株は、上昇基調を継続するとの見方が優勢だ。18年末には日経平均が2万7000円に向かうとの予想もある。国内外の良好なファンダメンタルズに加え、金融緩和的な市場環境が続くほか、需給面での安心感などが株価を下支えするとみられている。写真は東京証券取引所で2014年1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 22日 ロイター] - 2018年の日本株は、上昇基調を継続するとの見方が優勢だ。18年末には日経平均<.N225>が2万7000円に向かうとの予想もある。国内外の良好なファンダメンタルズに加え、金融緩和的な市場環境が続くほか、需給面での安心感などが株価を下支えするとみられている。一方、過去最高値圏にある米株の調整リスクを警戒する声もあった。

市場参加者の見方は以下の通り。

●世界経済拡大の追い風が吹き続ける

<クレディ・スイス証券 プライベート・バンキング本部CIOジャパン 松本 聡一郎氏>

世界経済は18年も成長を続けるとみている。生産や消費が堅調で、設備投資も伸びる見通しだ。金融は総じて緩和環境が続いているほか、米国やドイツでは財政もプラスに貢献する見込みとなっている。日本株はグローバル景気拡大の恩恵を享受しやすい。ドル/円はレンジ内推移の予想であり、企業業績拡大の追い風が吹き続けるだろう。

今年、日本株はかなり上昇したが、バリュエーションはまだ低い。世界の平均水準に戻るだけで1割程度の上昇が見込める。企業業績が伸びればさらに上積みされるだろう。2018年の日本株は、MSCIJapan<.dMIJP00000PUS>ベースで11.7%上昇を予想している。TOPIX<.TOPX>や日経平均でも同じ程度の上昇は期待できる。

●良好な需給を支えに上昇継続、日経平均2万6000円も

<東海東京調査センター シニアマーケットアナリスト 鈴木誠一氏>

ファンダメンタルズの良さが株高の背景とみられているが、17年の日本株を振り返れば、現実に行動したのはETF(上場投信)を買った日銀だけであり、ファンダメンタルズで判断する投資家は、ほとんど買っていない。来年も基本的な構図は変わらないが、需給は一段と良好になるとみている。日銀は下がれば買うという行動を淡々と継続しそうだ。

年後半は買い入れ額縮小の議論もありそうだが、企業の自社株買いが吸収するとみている。積み上がる内部留保が政府から問題視されているため、企業は自社株買いか配当の増加で対応するだろう。いずれにしても株高要因になる。

海外投資家は、ここ2―3年大幅な買い越しとなっていない。マーケットを崩す時に主役となるのが海外勢であり、買いポジションが積み上がっていないことは相場の安定に寄与する。

一方、株価が上振れるとすれば、鍵を握るのは個人投資家だ。一貫して売り越しの個人が先行きの強気見通しを背景に売り渋るだけで需給はタイトになり、薄商いの中で高値更新という展開があり得る。日経平均のレンジは2万1500―2万6000円を想定している。

●増益率鈍化でも緩和的環境は健在、年後半は米国発の調整リスクも

<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>

日経平均の予想レンジとしては、2万2000円から2万5000円。国内企業の19年3月期業績は8%の増益が予想されており、日経平均の1株利益は1650円程度を見込んでいる。今期の業績が良すぎた分、伸びは鈍化するが、日本株の押し上げる要因にはなる。足元の日本株に対して割高感は全くない。

また、日銀が来年に金融政策を変更するのは難しい。国内景気の緩やかな回復が続く中、19年には天皇陛下の退位や10%への消費増税が控えている。経済情勢に大きな影響を及ぼすような「余計なこと」はできない。ETFの年間買い入れ額も現状維持とせざるを得ない。

ただ、日経平均型の比率を下げ、TOPIX型の比率を高めるといったような中味の変更はあり得るだろう。

最大のリスク要因を挙げるならば米株だ。19年には米国が景気後退期に差し掛かると一部で指摘されている。これを先取りする形で来年後半から米国株が調整するリスクもある。そうなれば日本株は業績悪化懸念から売られることとなるだろう。

米朝関係や中東情勢も懸念材料だ。原油相場が乱高下すれば、CTA(商品投資顧問業者)などによる売買を通じ影響は当然、日本株にも波及する。

●米株高持続なら日本株は2万7000円目指す、インフレ加速に要注意

<大和証券 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和氏>

米株が崩れない限り、日経平均は年末にかけて2万7000円に向かうだろう。米連邦公開市場委員会(FOMC)では、緩やかな利上げ見通しが示されている。景気が拡大しながら低インフレが持続し、利上げ回数が限られてくるなら株価には追い風だ。長期金利が緩やかに上昇するなら、円安の支援も期待できる。

足元の米国経済は絶好調だ。税制改革を通じた企業収益の押し上げや、減税で浮いた資金の使途拡大によってさらなる景気刺激も期待される。中間選挙があるが、不透明要因にはならないかもしれない。

就任1年目の中間選挙は与党敗北がセオリーだが、今回は民主党が守りの選挙を強いられるのではないか。

もっとも、米株のバリュエーションは高まってもいる。税制改革の効果もある程度は織り込まれているだろうから、減税を通じて企業の1株利益が増えたとしても、それが株価に跳ね返るかは微妙な情勢だ。

米国は必ずしも財政状態が良いわけではない。今後、減税による財政赤字拡大の側面に焦点が当たるようなら、相場にとっても次第に重しになる可能性もある。

物価が低水準にとどまり続けるかにも注意が必要だ。これまで原油安や低賃金、携帯電話料金の値下げなどがインフレを抑制してきたが、既に原油価格は上昇基調が強まっている。

賃金や携帯電話料金が本格上昇し始めるなら、物価は押し上げられやすい。長期金利が、利上げ回数の増加への思惑などから3%へ接近する動きとなれば、株式市場ではリスク要因として意識されるかもしれない。

(株式マーケットチーム 編集:伊賀大記)

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