ニュース速報

ビジネス

焦点:中国の富裕層向け資産運用、資本規制が商機に

2017年09月04日(月)11時42分

 8月31日、中国の富裕層向け資産運用会社(ウェルスマネジャー)は、当局が高リスク投資や資本流出への締め付けを強めていることを商機ととらえ、事業の拡大を狙っている。写真は2010年1月、上海の招商銀行(2017年 ロイター/Aly Song)

[香港 31日 ロイター] - 中国の富裕層向け資産運用会社(ウェルスマネジャー)は、当局が高リスク投資や資本流出への締め付けを強めていることを商機ととらえ、事業の拡大を狙っている。

招商銀行<600036.SS>や中国国際金融有限公司(CICC)<3908.HK>の子会社や、諾亜財富(ノア・ホールディングス)などのウェルスマネジャーは今、小規模な都市に照準を定めている。こうした都市の富裕層は従来、高いリターンを約束するが流動性が低くて不透明な、影の銀行(シャドーバンキング)の投資商品に資産運用を頼ってきた。

中国国内の富裕層向け資産運用市場はここ数年で急拡大した。今年は28兆ドルと、昨年の国内総生産(GDP)の約3倍相当に達し、米国に次ぐ世界第2位の市場になる見通しだ。

しかしノアによると、1000万元以上の投資可能資産を持つ中国富裕層のうち、ウェルスマネジャーのサービスを受けている割合はわずか10─12%。この割合は、韓国が約20%、米国と欧州が55─60%となっている。

銀行関係者らによると、ウェルスマネジャーが事業拡大に努めるとともに、富裕層の間で銀行預金や不動産以外への投資分散の意識が高まれば、中国でもこの割合が高まりそうだ。

CICCの富裕層向け資産運用事業の責任者、ウー・ボー氏は「政府は資金が規制下のチャネルを経由し、透明性の高い投資商品に流れるよう取り締まりに努めている。これはわれわれにとって追い風だ」と語る。

中国は規制が厳しく、資本市場の発展が遅れているため、グローバル銀行による富裕層向け事業が阻まれている。このため国内のウェルスマネジャーは外資系との競争にほとんどさらされない。

北京や上海ではHSBCやフィンテック大手が富裕層向けのビジネスを拡大しているが、ノアは現在、より小規模な瀋陽や温州などの市で新規事業の獲得を狙い、人員を増やしている。

ノアのケニー・ラム社長によると、人口700万─1000万人規模の「2級」、「3級」都市には「目立たないが、大勢の企業家がいる」。温州などの企業家は「ぱっと見ただけでは億万長者だとは分からない。ティーシャツにジーンズという格好で『ケニー、プライベートエクイティについて教えてくれない?』と尋ねてくる」という。

コンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーと招商銀行が6月に公表した調査結果によると、中国の22省はいずれも、投資可能資産1000万元以上の個人が2万人以上おり、9省ではその数が5万人を超える。

ただ、コンサルタントによると2級、3級都市での事業展開はリスク管理や顧客のバックグラウンド調査などの面で懸念もある。あるコンサルタント会社幹部は「中国において顧客調査は非常に重要で、本当の資金源が公表されていない場合も多いので非常に難しい」と語った。

(Sumeet Chatterjee記者 Julie Zhu記者)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル化学賞に北川進・京都大学特別教授ら3人

ワールド

欧州の金利「適切な水準」、追加のガイダンス不要=ス

ビジネス

アサヒGHDへのサイバー攻撃、ランサムウエア集団「

ワールド

中国、台湾総統を激しく非難 「身を売って外国勢力と
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女性を襲った「まさかの事件」に警察官たちも爆笑
  • 4
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    ヒゲワシの巣で「貴重なお宝」を次々発見...700年前…
  • 8
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 9
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中