ニュース速報

ビジネス

焦点:三井住友FG人事、合併15年で初めて旧行バランス崩れる

2016年12月17日(土)01時10分

12月16日、三井住友フィナンシャルグループの旧行バランス人事が、三井住友銀行の発足以来15年で初めて崩れた。写真は2010年2月、都内で撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 16日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループの旧行バランス人事が、三井住友銀行の発足以来15年で初めて崩れた。16日発表したトップ人事は、これまで2代続けて旧住友銀行と旧さくら銀行の間で分け合っていた持ち株会社社長ポストと傘下銀行頭取ポストを、旧住友銀が独占するかたちとなった。1990年代後半の都市銀行大合併時代から、ようやく名実ともに適材適所の人事が進み始めた。

<金融庁、バランス人事に懸念表明>

経営のかじ取りを担う持ち株会社社長と銀行頭取、両社の会長ポストの布陣をみると、持ち株会社の次期社長に就任する国部毅・三井住友銀頭取と後任頭取に就く高島誠同銀専務は、ともに旧住友銀出身。旧さくら銀出身は、持ち株会社と銀行の会長を兼務し、両社の取締役会議長を務める宮田孝一社長だけとなった。

行内外の関係者の間では、持ち株社長と銀行頭取を旧行で分け合うバランス人事が踏襲されるとの見方が強かっただけに、特に旧さくら銀勢からは恨み節も漏れているのが実情だ。

ただ、長年続いたバランス人事からの決別は、金融庁の後押しもあった。

一昨年5月に開かれた金融庁幹部と三井住友を含む主要行の企画担当役員との意見交換会。金融庁サイドから「3メガバンクには、いまだに旧行のバランス人事がみられる。金融界の常識かもしれないが、社外のステークホルダーにとって常識なのか」との発言が出た。

発言の主は、森信親・現長官だ。森氏は、その場で適材適所の人事を行うべきとの見解を示したという。

「そう遠くない時期に、バランス人事を廃すことの必要性を感じた」と、ある主要行役員は話す。

<高島氏は行内切っての国際派、国内業務に弱点>

高島次期頭取は、11年間の米国勤務を誇る行内切っての国際派。企画部長も務めており、銀行業務全般に明るいとは言うものの、リテール事業や国内法人業務の実務経験はほぼゼロだ。行内評でもトップ候補に挙げる人は少数派だ。

日銀のマイナス金利導入により国内ビジネスの成長頭打ちは明白で、海外事業が大手行のけん引役となっているのは間違いない。銀行単体の海外収益率は4年前の23%から45%に上がっている。

ただ、行内には「国内業務を知らないのに務まるのか」(幹部)との声が出ているのも事実だ。

しかし、16日夕の会見で高島次期頭取は「国内の業務でどれだけグローバルな味付けを出していけるのかが大事だ」と述べ、内なる国際化路線を打ち出した。

<他メガにも影響する可能性>

三井住友が長年の旧弊からの脱却を図ったことは、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループなど他メガにも波及する可能性がある。両グループとも、バランス人事のくびきから脱しきれいていない。

「旧行のバランスを保つことで、逆に不要な人事抗争を抑えることができる」と、その効用を強調する声も一部にはある。

しかし、海外業務が拡大の一途をたどり、行員の国籍も多様化。顧客や株主だけでなく、海外の規制当局の視線も厳しさを増す。「内向き論理だけで人事を回して大丈夫か」(別の大手行役員)という懸念も広がっている。

ある大手金融機関の首脳は「三井住友の行く末を、三菱UFJもみずほも固唾(かたず)を飲んで見守っているだろう」と話している。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドとロシア「中国に奪われたようだ」、トランプ氏

ビジネス

焦点:日本車各社、米関税の大統領令に安堵も試練続く

ワールド

トランプ氏は良い意味で「非常にシニカル」=ロシア大

ビジネス

世界の食料価格、2年半ぶり高水準 肉・砂糖・植物油
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 8
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 10
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中