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第3四半期の米GDP速報値1.5%増、在庫減少響く 内需堅調

2015年10月30日(金)00時51分

10月29日、米商務省が発表した第3・四半期のGDP速報値は年率換算で前期比1.5%増となり、3.9%増だった前期から大きく減速した。予想は1.6%増だった。企業が前期に積み上がった在庫を取り崩したことが響いた。写真は2014年7月、ニューヨークで(2015年 ロイター/Lucas Jackson)

[ワシントン 29日 ロイター] - 米商務省が29日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)の速報値は年率換算で前期比1.5%増となり、3.9%増だった前期から大きく減速した。市場は1.6%増を予想していた。企業が前期に積み上がった在庫を取り崩したことが響いた。ただ、内需は堅調で12月の利上げに向けて連邦準備理事会(FRB)に希望を与えるかもしれない。

在庫減少は一時的なものである可能性が高く、エコノミストらは米経済の基礎的条件は力強く、第4・四半期のGDPは伸びを取り戻すと予想している。

FRBは28日の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で、米経済について「緩やかな」ペースで成長していると表現。次回12月の会合に声明で言及することで、年内利上げの可能性を残した。FRBは政策金利のフェデラルファンド(FF)レートを2008年12月からゼロ近傍に据え置いている。

金融危機に伴う07─09年の景気後退が終わった後も、米国の経済成長率は年平均で2.5%を超えることがなく、伸び悩みが続いている。

BMOキャピタルマーケッツのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は「基調的な成長は依然として力強い。少なくとも金利を危機対応のための低い水準にしておく必要がないくらいの十分な強さがある」と述べた。

GDP統計の発表後、米国債は売られ、ドルは主要通貨に対し、それまでの下落幅を縮小した。

第3・四半期に企業が積み上げた在庫は568億ドル相当で、第2・四半期の1135億ドル相当から大きく減少した。第3・四半期の在庫は、2014年の第1・四半期以来、最も低い水準だった。在庫は製造、卸売り、小売りの各段階で減少した。

GDPに対する在庫の寄与度はマイナス1.44%で、12年の第4・四半期以来、最も大きなマイナスだった。

プラント・モラン・フィナンシャル・アドバイザーズで最高投資責任者(CIO)を務めるジム・ベアード氏は「在庫減少は、健全な取り崩しの一環で今後の力強い経済成長に向けた土台をつくることになる」と話している。

在庫減少によるマイナスの影響は、力強い消費によって和らげられた。個人消費はガソリン価格が下落していることに加え、住宅や労働の市場が引き締まってきたことが追い風となっている。

GDPの3分の2以上を占める消費者支出は3.2%増。第2・四半期は3.6%増だった。貿易や在庫、政府需要を除いた国内の民間需要も3.2%増と堅調に伸びた。

比較的健全な労働市場とインフレ率の低さが家計の購買力を押し上げ、消費者支出を引き続き下支えすると予想されている。家計の可処分所得は第3・四半期に3.5%増え、前期の1.2%増から伸びが加速した。

この日、米労働省が発表した週間の失業保険申請件数は、1973年12月以来の低い水準となった。

ドル高が続いていることが影響して、輸出は第3・四半期に伸び悩んだ。ただ、輸入も減速したことで、輸出の伸び悩みは相殺される形となっており、第3・四半期の経済成長に貿易はほとんど影響しなかった。

エネルギー産業の支出カットも経済成長に悪影響を及ぼした。原油価格の急落はシュルンベルジェやハリバートンなどの油田関連企業に設備投資の削減を迫っている。シュルンベルジェは今月に入り、17年まで原油需要の回復は期待できないとし、油田探査や原油生産のための支出は今年も減少するとの見通しを示した。

鉱物探査や油田開発のための投資は46.9%減った。第2・四半期は約68%の減少だった。住宅を除くインフラ設備投資は4.0%減。商業やヘルスケア関連のインフラ投資の弱さが響いた。

内需が力強いにもかかわらず、ドル高とガソリン安の影響で物価は上昇率を縮小した。個人消費支出(PCE)物価指数は前期の2.2%上昇から1.2%上昇に減速した。変動の激しい食品とエネルギーを除いたベースでも、1.3%上昇にとどまった。 

*内容を追加しました。

ロイター
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