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インタビュー:日銀は30日会合で「静観」の可能性=浜田参与

2015年10月26日(月)19時31分

 10月26日、安倍首相の経済ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大名誉教授(写真)は、ロイターに、市場で追加金融緩和観測が広がっている30日の日銀金融政策決定会合では、雇用情勢の改善が続く中で日銀が追加緩和を見送る可能性があるとの見解を示した。2014年10月撮影(2015年 ロイター/Issei Kato)

[東京 26日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は26日、ロイターとのインタビューに応じ、市場で追加金融緩和観測が広がっている30日の日銀金融政策決定会合では、雇用情勢の改善が続く中で日銀が追加緩和を見送る可能性があるとの見解を示した。

米利上げ観測で円安基調が維持されている限り、日銀が自ら動く必要はない、とも語った。

新興国経済の減速などを背景に日本の経済・物価の下振れリスクが強まる中、市場では日銀が30日の会合で追加の金融緩和に動くとの見方が広がりつつある。

浜田氏は、同日の会合議論について、所得改善の鈍さを指摘しながらも、「今は雇用が順調に増えており、それほど心配する必要があるのか」と述べ、「(金融政策は)静観するという考え方もある」と語った。

さらに、為替市場でドル高/円安基調が維持されている背景には「米国の出口に対する思惑が効いている。日銀だけの効果ではない」と指摘。「米利上げは、(為替市場を通じて)日本経済に追い風であり、景気刺激に働く」とし、「米利上げ観測が円安に響いている限り、(日銀が)自ら動く必要ない」と指摘した。

一方、中国人民銀行(中央銀行)は23日に政策金利と預金準備率の引き下げを決め、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は22日、12月の追加緩和を示唆した。浜田氏は、中国と欧州の金融緩和によって人民元とユーロの相場が下落する可能性があるとし、「それが(日本の)労働市場に響いてくるならば、日銀も緩和しなくてはならない」との認識を示した。

<低所得者対策が不可欠、法人税は16年度20%台を>

そのうえで、原油安や円安などで企業収益が高水準にあるにもかかわらず、賃上げや設備投資、株主還元などに「あまり使われていない」と指摘。過去のバブル経済崩壊やリーマン・ショックなどの経験から「日本の企業は非常に保守的になっている。だから金融政策が効かないとの考えもある」とし、政府による低所得者への分配政策が必要との考えを示した。

こうした観点から、政府が2017年4月に予定している消費税率10%への引き上げについても軽減税率や還付金などの低所得者対策が「必須」と強調。「消費税で困るのは所得の低い人。そういう人を無視して、何もやらないで消費税を10%に引き上げることは非常に危険だ」と警告した。

また、足元で景気がもたついている背景には「消費だけではなく、投資が増えないことがもっと効いているかもしれない」とし、あらためて法人実効税率の大胆な引き下げを主張。政府は現在32.11%の法人実効税率を15年度から数年で20%台に引き下げる方針を示しているが、具体的な時期は明示していない。浜田氏は「すぐにやった方がいい」とし、16年度から20%台に引き下げるべきとの見解を示した。

(伊藤純夫 金子かおり)

ロイター
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