ニュース速報

ビジネス

CPI引き上げる「家賃の品質調整」、是非めぐり激論=統計部会

2015年07月16日(木)14時59分

[東京 16日 ロイター] - 内閣府の統計委員会のサービス統計・企業統計部会は16日、消費者物価指数での家賃の品質調整の是非をめぐり、「研究が必要」と慎重姿勢の総務省側と、「パソコンなどと同様に品質調整が必要」(委員を務める渡辺努東大教授)とする一部委員らの間で激論が交わされた。結論は8月以降の統計委員会に持ち越されることとなった。

発端は6月25日に開かれた統計委員会。委員を務める日銀の前田栄治・調査統計局長が、あくまで個人の意見として、国内総生産(GDP)統計の作成などで、持ち家を借家とみなし理論的に計算する「帰属家賃」の計算などに使われる家賃に、家屋の経年劣化を反映した「品質調整」を行うよう提案した。帰属家賃で品質調整を加味すれば、一定の仮定の下で、コアCPIが0.1─0.2ポイント押し上げられるとも指摘した。

前田委員の要望を受けて16日の部会では家賃の品質調整の是非を論じた。CPIを作成・公表している総務省の上田聖・統計局消費者統計課物価統計室長は、現状のCPIはすでに「全体として平均的な家賃の物価変動が計測されている」と指摘。「金融政策などで幅広く使われるCPIをこの時期、上方修正することが幅広い理解を得られるか慎重な吟味が必要」と説明。当面、家賃の品質調整を実施している米国の事例などの研究を進めたいと述べた。

一方、渡辺委員は「修正によって影響がどのように出ようと正しい計測が大事」と強調。すでにCPIではパソコンなど多くの財で品質調整が行われており、家賃も品質調整を行うのが筋だと主張。総務省側に対して「現行方法が正当化される論拠」を求めた。

このため、8月に開かれる次回の部会では日銀が作成している企業向けサービス価格指数で、事務所家賃の品質調整をどのように処理しているか日銀側(調査統計局の肥後雅博参事役)が説明することとなった。

なお、6月の統計委員会で前田委員が家賃・品質調整と並べて要望していた、消費増税の影響を除いた指数の公表について、総務省は検討すると正式に回答した。総務省は5年に1度見直す消費者物価指数の新基準案を近く公表し、パブリックコメントを募り、来年7月分から新基準(2015年度基準)での公表を始める予定。2017年の消費税増税の際には税抜指数が表示される見通しとなった。

*本文中の脱字を補って再送します。

(竹本能文)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、イスラエル・ウクライナ支援姿勢強調 士

ワールド

ガザ戦闘休止交渉、近く再開の見通し ハマス当局者「

ワールド

英首相、選挙に勝てば18歳に兵役導入へ

ワールド

中国がグアテマラの貨物入国拒否、台湾との関係影響か
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 9

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中