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アングル:年金など投資家、利回り「消滅」で高リスク債券に食指
2月13日、投資家がリターン確保に向け、流動性が低いあるいは信用格付けが低いなど、よりリスクの高い債券に手を伸ばし始めている。写真はフランクフルト証券取引所、1月撮影(2015年 ロイター/Pawel Kopczynski)
[ロンドン 13日 ロイター] - 投資家がリターン確保に向け、流動性が低い、あるいは信用格付けが低いなど、よりリスクの高い債券に手を伸ばし始めている。最上位格付けのソブリン債どころか社債でも利回りが「消滅」するケースが出始めたためだ。
戦略の見直しを進める投資家は年金基金から中央銀行まで広範に及ぶ。いずれもデフレやゼロ金利、債券利回り消滅という市場環境にあってリターン確保に苦慮している。
これらの投資家はヘッジファンドなど「オルタナティブ」投資や株式などに走るよりは、債券市場内で他の投資先を探す意向が強い。
インサイト・インベストメントの固定金利商品担当シニアスペシャリスト、エープリル・ラルース氏は「顧客との間でマンデート修正の話が出始めたのは1年半前だが、昨年10─12月に急増した」と話した。今の債券利回りの低さを考えれば、戦略見直しに関する顧客との協議はさらに増える見通しだという。
全世界で42兆ドルを運用する年金基金のうち、確定拠出型の比率は現在38%。これが今後数年間で確定給付型を上回る見通しであるため、利回り追求の姿勢はますます強まりそうだ。タワーズ・ワトソンによると、全世界で年金基金運用資産の対国内総生産(GDP)比は2008年の54%が昨年末には84%に上昇した。
債券利回りの低下に拍車を掛けたのは昨年下半期の原油価格急落だ。インフレの低下で利回りが下がり、場合によってはマイナスとなった。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの試算では、世界中でマイナス利回りとなった長短期の国債は約7兆3000億ドル相当。ドイツ国債は6年物まで、スイス国債は10年物までの銘柄がいずれもマイナスに沈み、スイスではネスレ
しかし投資戦略の変更は一朝一夕で進むものではない。資産運用会社と顧客との協議、変更決定、資産処分など、実際の手続きには数カ月要するのが一般的だ。
<従来的思考の切り替え>
ただ、修正の圧力は高まっている。英年金保護基金(PPF)の先週の発表によると、英国の6057の民間年金基金の積み立て不足は昨年末時点で過去最高の3675億ポンド(5595億9000万ドル)に達した。
年金基金は長期負債に見合う長期資産を買って資産運用しているのが普通なので、投資債券の年限をさらに伸ばす余地はほとんどない。このため債券市場内で新たな投資分野に目を向けている。
マーサー・インベストメンツのパートナー、ポール・キャバリエ氏によると、顧客はこの数年で国債や投資適格債など「コア」な資産を対象とする戦略から離れ、これまで投資しなかった地域の債券や高利回り債、新興国債などを含む「コア・プラス」戦略へ、さらには幅広い資産を売買する「無制約」戦略へと移行している。
もっとも高格付けの国債は市場規模が大きく流動性も高いため、いくら利回りが低いといっても無視できる資産クラスではない。ポートフォリオの分散化、安全資産の確保、流動性などの面から保有は理に適っている。デフレを考慮すれば、実質的にはそこそこのリターンがあると言えるかもしれない。
ジュネーブを本拠とするユニジェスチョンのシニア・バイス・プレジデント、オリバー・ブリン氏は顧客に国債保有を継続しつつも銘柄を慎重に選ぶよう推奨している。「利回りは今後も低水準にとどまりそうで、リターンはプラス、株のリスクを分散化する必要もある」と述べ、最上級格付けではないが信用リスクがイタリアやスペインほどではないアイルランドのような国を物色しているとした。
(Jamie McGeever記者)