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2025年11月07日(金)17時15分

写真はトランプ米大統領と高市早苗首相。10月28日、東京で撮影。REUTERS/Evelyn Hockstein

Tamiyuki Kihara

[東京 7日 ロイター] - 政府が日米関税交渉で合意した5500億ドル(約83兆円)の対米投融資に備えるため、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)関連費を年内編成予定の今年度補正予算案に盛り込む方針を固めた。米国側は年内にも対米投資の第1号案件を決定したい意向を示しており、政府は資金の出し手となるJBICとNEXIの財務基盤強化のため予算計上が必要と判断した。

複数の日本政府関係者が明らかにした。関係者の1人は「対米投融資の具体的案件が定まる前に、必要な予算を確保しておくことが重要だ」と述べた。予算規模については検討中で、関係省庁の協議を経て近く決定する。政府は5500億ドルについて、政府系金融機関のJBICによる出資や融資のほか、政府が100%出資するNEXIによる融資保証からなる投資枠の上限と説明してきた。

JBICは2024年度、計約1兆5000億円の出資、融資、保証承諾を実施した。25年3月末の資金残高は出融資が約15兆8000億円、保証は約1兆3300億円となっている。仮に現在の自己資本比率を維持したまま5500億ドルの投融資を実施する場合、約18兆円の資本増強が必要になるとの試算もある。NEXIについても、保証枠の拡充などに向けて予算措置が必要となる見通しだ。

日米は9月、自動車など日本の輸出品に対する関税を15%へ引き下げる一方、日本が米国に対して5500億ドルの投融資を実行することなどを盛り込んだ文書を発出した。投融資は日本側の債権が完済されるまでは米側と現金収入を折半し、その後は日米が1対9の割合で配分するなどのスキームだ。

10月下旬にトランプ氏が来日した際には、対米投融資の候補となり得る21案件を発表。エネルギーやAI(人工知能)向け電源開発、AIインフラの強化、重要鉱物の4分野を中心に両国の企業20社以上が関心を寄せていると説明している。

一方、トランプ氏の関税措置を巡っては米連邦最高裁が合憲性を審理している最中だ。早ければ年内にも判決が下されるとの見方がある。前出の日本政府関係者は「日米合意は法的なものではないので、仮に最高裁が違憲と判断したとしても投融資の合意内容は変わらない」と述べ影響は限定的との見方を示した。

最高裁が審理しているのは日本を含む各国に課した「相互関税」と、合成麻薬の流入対策として導入した「フェンタニル関税」で、トランプ政権はいずれも国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にしている。トランプ氏は11月6日、最高裁が不利な判決を下した場合は「わが国にとって壊滅的な打撃になるだろうが、『プランB』を策定しておくことも必要だと思う」と記者団に説明した。

(鬼原民幸 編集:久保信博)

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