コラム

CIA殺人「外交特権」盾に取る米政府

2011年02月23日(水)16時44分

 各紙が一斉に報じたように、パキスタン東部ラホールでパキスタン人2人を射殺したとして逮捕されたアメリカ人、レイモンド・デービスがCIA(米中央情報局)の請負業者だったことが明らかになった。

 先月27日にデービスが逮捕されてから、米政府はずっと、デービスは米領事館の「事務・技術職員」として外交特権をもつと主張、即時釈放を要求してきた。

 オバマ政権高官は報道陣への背景説明で、デービスがCIAのために働いていたとしても免責特権に何ら変わりはないと言った。


質問)デービスがCIA要員だったという報道が本当だとすれば、外交特権は無効になるのか。

高官)ここで唯一考慮すべきなのは、デービスがパキスタンに入国した際、パキスタン外務省に「事務・技術職員」と申告していたかどうか。そして答えはイエスだ。その時点で、彼は外交特権を獲得した。

 もし誰かがアメリカに外交団の事務・技術職員として入国してしまえば、できることは何もない。そこで与えられた選択肢はは、その人物の入国を拒否して本国に送還するか、管理・技術職員の立場で受け入れるかだ。


 スパイ容疑をかけられた人間が外交特権を使うのは昔からよくある話だ。たとえば07年には、オーストリア人からドイツ軍のヘリに関する機密情報を入手したとされるロシア人外交官が、国連大気圏外平和利用委員会の一員だという理由で外交特権を認められた例がある。ドイツとオーストリアの捜査当局は、このロシア人は軍事情報機関で働いていると睨んでいたが、ロシアは外交特権を手放さなかった。

 今回の場合も、国際法は確かに米政府の味方かもしれないが、デービスの件でますます都合の悪い情報が出てくるなかで本国政府が外交特権に固執すれば、パキスタンに駐在する本物の米外交官の仕事は辛いものになるばかりだろう。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年02月22日(火)12時59分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 23/2/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 7
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story