コラム

ハイチを救う陰の主役ブラジル

2010年01月18日(月)14時42分

 世界中の国々がハイチにいる自国民を必死になって探しているが、今回の大地震でとりわけ痛みを感じているのはブラジルだ。ブラジルは地震が起きるずっと前からハイチに深くかかわってきた。国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に最も多くの兵士を派遣し、その軍事部門を主導している。

 だが地震によって少なくとも14人のブラジル兵が死亡、4人が行方不明になっている。ブラジルのマザー・テレサとも呼ばれる著名な医師ジルダ・アルンス・ニウマンも死亡した。

 それでもブラジルはハイチ救援の最前線に立っている。状況を把握して復興戦略を練るためにジョビン国防相が現地入りしていることからも、同国がいかにこの災害を重視しているかが分かる。

 ルラ大統領はオバマ米大統領らと連絡を取り合って救援活動の調整を進めている。ブラジル政府は軍用輸送機で支援物資を運んでおり、1500万ドルの援助も表明した。アモリン外相はMINUSTAHの任務を拡大して復興支援もすべきだと主張している。

 以前からふらふらの状態だったハイチは、この地震で事実上のノックアウト・パンチを食らった。今後何年にもわたって前例のない規模の国際支援が必要になるだろう。当然ながらアメリカが緊急救援活動の先頭に立っている。だがイラクとアフガニスタンの復興支援を抱えていることや、ハイチを占領していた歴史を踏まえると、アメリカは長期的なハイチ復興活動を主導する国として最もふさわしいとは言えないかもしれない。

 一方のブラジルは既にハイチの安全保障にかかわっており、しかもグローバルな国家として行動することを望んでいる。ハイチ危機は、台頭しつつあるこの超大国が地域の安全保障で主導的な役割を果たせる機会だ。ハイチがその助けを必要としていることは間違いない。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年01月15日(金)12時25分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 18/1/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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